着物基礎知識

訪問着とは?格と着用シーン、コーディネートを徹底解説

普段あまり着物を着ない人でも一着は持っていたい訪問着。

幅広いシーンで着回しがきく便利な着物です。

しかし、中にはこんな疑問を持っている方もいるかもしれません。
「訪問着は持っているけれどどんな時に着るものなの?」
「合わせる帯が分からない」

そこで今回は、

  • 訪問着の特徴や格の基本知識
  • 意外と知らない人も多い訪問着の歴史
  • 着用シーンごとのおすすめコーディネート

といった内容で訪問着について詳しく解説していきます。


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訪問着とは?


訪問着は、既婚、未婚を問わず式典や結婚式、パーティー、観劇など様々なシーンに着用することのできる着物です。まずは訪問着の特徴と格について解説します。

訪問着の特徴

訪問着の大きな特徴は、絵羽模様(えばもよう)という柄付けにあります。

絵羽模様とは、衿や胸、袖、脇線等の着物の縫い目をまたいで描かれている模様のことです。訪問着は、胸から袖、また裾の部分に模様が入っています。

「白生地」と呼ばれる真っ白な反物を、一度着物の形に仮仕立てし、下絵を描きます。その後糸を解き、それぞれの模様に細かく加工を施すことで、一枚の絵画のような境目のない模様付けを行うことができます。

品格があり、華やかな印象の訪問着はフォーマルシーンにピッタリな着物です。

色や模様も様々で、優しく控え目な色合いのもの、季節の植物や昔から縁起が良いとされる吉祥模様があしらわれたもの、他にも個性的でモダンなものなど、デザインも豊富です。

訪問着の格

着物はその種類によって第一礼装から普段着まで大きく分けて4つの格に分かれます。訪問着の格はどこに位置づけられるのでしょうか?

第一礼装 打掛、本振袖、黒留袖、喪服など
準礼装 振袖、色留袖、訪問着、付け下げ、色無地など
外出着 小紋、紬、絞りなど
普段着 ウール、銘仙、浴衣など

上の表は、着物の格を表すものです。第一礼装が一番格上の着物で、一番格が低いのが普段着となります。訪問着は、フォーマルシーンで着用する事のできる格の高い準礼服に区分されます。

訪問着の中でも背中に紋の入っているものは、入っていないものより格上です。紋入りの訪問着は、式典や結婚式・正式なお茶会といったフォーマルな場にふさわしい装いです。しかし、着用の場はフォーマルな場に限定されることになります。

紋の入っていない訪問着は、用途が幅広いのが特徴です。帯や小物の合わせ方次第で、披露宴などのフォーマルな場はもちろん、ホテルや料亭での少しかしこまった食事の場など様々なシーンで着用できます。

訪問着の歴史と成り立ち


少し意外に感じるかもしれませんが、訪問着が誕生したのは大正時代です。

明治時代までは、小紋に紋を付けた着物をフォーマルシーンに着用していました。その後、明治の終わりから大正時代になると、日本人の中にも西洋文化が取り入れられ、衣服も着物から洋服へと急速に移り変わっていきました。

西洋化に伴い、生活様式も正座から、テーブルの文化へと徐々に変わっていきます。すると、当時からあった黒留袖や色留袖を着用して、イスに腰かけると下半身が見えづらくなってしまいました。

黒留袖や色留袖は、上半身に模様が付いておらず、まるで無地の着物を着ているようで、「胸にも模様があったら華やかになるのに」という考えも生まれてきました。

この「急速な着物離れ」や「人々の暮らしの西洋化」を危惧して、当時の三越百貨店が、「日本人の伝統的な文化を取り戻そう」と上半身も華やかな訪問着を発売したのが、訪問着の始まりです。

格式と華やかさを兼ね備えながら、留袖・色留袖よりもぎょうぎょうしくない訪問着は、裕福な人々から広まり、戦後に一般庶民にも普及して現在に至ります。

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訪問着の着用シーンと帯合わせ


訪問着は、その模様や帯合わせにより様々なシーンで着用することができます。それぞれのシーンでのおすすめの柄や、帯合わせについて見てみましょう。

友人の結婚式

結婚式などのフォーマルな場に訪問着を着る場合には、優しくやわらかいイメージの地色に格調ある古典柄を選びましょう。紋の付いている訪問着はより品格が加わります。

帯は、金や銀の入った袋帯でより華やかさと品格を演出しましょう。帯揚げや帯締めも淡い色や金糸を加えたものなどを選ぶとよりフォーマルな装いになります。

注意したいのが、全体的な着物の色です。花嫁の着る色である白や、親族の着る黒留袖に似た黒地の訪問着は避けるのがマナーです。

子どもの入学式・卒業式

入学式や卒業式の主役はあくまでも「子ども」です。

主張の強い華やかな色柄は避け、控え目なものを選ぶことで母親らしい落ち着きを演出できます。帯も式典にふさわしい古典柄の袋帯を選ぶと、全体の品格も上がります。

紋が入った訪問着は更に格が上がり上品なイメージになります。半衿も奇抜な色柄は避け、白地か刺繍が控え目に施してあるものを合わせましょう。

お茶会

お茶会には、大寄せのお茶会(気軽なお茶会)から、格式の高いお茶会まで様々な種類があります。

初釜(年初に行われる茶会)や家元主催の茶会など格式の高いお茶会の場合には、品格のある訪問着を選びます。個性的な柄や奇抜なデザインの訪問着は避け、控え目な色柄のものを選びましょう。

控え目な柄をチョイスすることで、お茶会の雰囲気や道具類の邪魔をすることなく、その場にしっくりとなじみます。帯は古典柄の袋帯を選ぶとさらに上品なイメージになります。

気軽なお茶会の場合には、名古屋帯を合わせて少しカジュアルなイメージにするなど、お茶会の雰囲気に合わせて訪問着や帯などを選びましょう。

友人との観劇やランチ

友人との観劇やランチにも訪問着を着用できます。

結婚式や入学式、お茶会などと違い主役は自分自身です。完全プライベートな時間に着用する着物に制限や決まりはありません。むしろ自分自身のおしゃれの見せどころでもあります。

個性的な柄やはっきりとした色合いの訪問着など、自分の好みに合ったものを着用して思い切り楽しみましょう。

帯は、金銀の糸を使っていないカジュアルな洒落袋帯や名古屋帯を合わせます。こうする事で、上品な中にも遊びのあるカジュアルな着物姿を演出することができます。

ただ、観劇の招待客として出席する場合には、招待してくれた側に失礼の無いように、会場の雰囲気に合わせたものを選ぶなどの配慮が必要です。

訪問着にまつわるQ&A

付け下げとの違いは?

訪問着とよく似た着物に付け下げがよく挙げられますが、ポイントを知っておけばすぐに見分けることができます。

訪問着が「縫い目にまたがって模様が描かれている」のに対し、付け下げの模様は縫い目にまたがらず描かれます。

訪問着と付け下げは、同じような柄付けのためまぎらわしく感じますが、このポイントが頭に入っていれば問題なく見分けることができます。

色留袖との違いは?

色留袖は訪問着と同じく縫い目の境なく、裾に一枚の絵のような繋がった模様が付けられた絵羽模様です。訪問着と違うのは「着物の上半身には柄が無い」ということです。

紋の入っている訪問着と色留袖は非常によく似ていますが、「上半身に柄があるか、ないか」ですぐに判別できます。

訪問着はレンタルできる?価格はどのくらい?

訪問着は着物専門のレンタルショップなどで気軽にレンタルできます。レンタルの相場は、10,000~100,000円程です。

この価格の差は、素材や装飾による違いです。また訪問着単体かセットかによっても違ってきます。

素材が絹100%の正絹の訪問着は上質で光沢があり着崩れにくいため価格も高めです。友禅染めなど手描きで書かれた訪問着はもっと高価になります。

反対に、ポリエステルなどの化学繊維でできた訪問着は安価です。正絹と比べると風合いが劣る点に注意しましょう。

訪問着単体でもレンタルできますが、ほとんどのレンタルショップが帯や帯揚げ、帯締め、更に腰紐や草履バッグなどをセットで貸し出しています。

それぞれのメリットデメリットを考えながら、好みや予算に応じて好きなものをチョイスしましょう。

訪問着は自分で着れる?

着付けの心得があればもちろん自分で訪問着を着る事もできます。

ただ、訪問着はかしこまった席に着ていくことの多い着物なので「心得はあるけれど着崩れが心配だな」と少しでも不安に思う場合には、着付けができる知り合いや着付け師さんにおまかせすると安心です。

自前の訪問着を着付けてもらう場合の費用は、だいたい5,000円程が相場です。しかし、実店舗のあるレンタルショップで訪問着一式をレンタルする場合には、着付け費用はかからない場合もあります。

レンタルする場合には「着用当日着付けてもらえるのか、費用は別途必要か」など事前に確認しておくと安心です。

まとめ

様々なシーンで幅広く着用することのできる訪問着は一枚は持っておきたい着物です。

それぞれの着用シーンに合ったコーディネートで、時にはつつましく上品に、時には思いっきり遊んで、訪問着を着ていろいろなところにお出かけしましょう。