着物基礎知識

黒留袖とは?格と着用シーン、コーディネートを徹底解説

黒留袖は、結婚式などお祝いの席で着用される格の高い着物です。

しかし、あまり頻繁に着る着物ではないので「どんな着物?」「どの立場の人が着るの?」「持っていないけれど、レンタルはできる?」など黒留袖の知識については意外と知らない人も多いかもしれません。

そこで、今回は「黒留袖」に焦点をしぼって

  • 黒留袖の特徴や格
  • 黒留袖によく描かれる柄やその意味
  • 合わせる帯
  • 年代別のおすすめ柄
  • レンタル費用

などを詳しく紹介していきます。

黒留袖とは


黒留袖は、主に結婚式などの新郎新婦の母親や祖母が着用する礼装です。ここでは、黒留袖の特徴や格、装いのポイントなどを紹介します。

黒留袖の特徴

黒留袖の特徴は以下の通りです。

  • 裾の絵羽模様(えばもよう)が特徴
  • 五か所に染め抜き日向紋(そめぬきひなたもん)が付いている
  • 構造は、比翼仕立て(ひよくじたて)になっている

黒留袖は、黒地の着物の裾に絵羽模様が付いているのが特徴です。絵羽模様とは、脇や背縫いなどのそれぞれの縫い目で模様が途切れる事なく流れるように模様が描かれている柄の事です。

第一礼装にふさわしく、縁起の良い模様が描かれていて、金箔や、刺繍で華やかに彩られているものもあります。また、黒留袖には、背中心、両胸元、両外袖に計5つの染め抜き日向紋が必ず付いています。染め抜き日向紋とは家紋を白く染め抜いた紋のことです。

また、他の着物と少し構造が違い、比翼仕立てになっています。比翼仕立てとは、衿、袖口、振り、衽に白い布が付いていて、黒留袖を着ると、外側からはまるで二枚着物を重ねたかのように見える仕立ての技術です。

これは昔「祝いを重ねる」という意味で、白地の着物と留袖を重ねて着ていた事の名残です。一般的に、着物には季節の柄が描かれているものが多く、季節に合わせて桜柄なら2月後半から3月というように、着物を選び楽しみます。

しかし、黒留袖は、結婚式の新郎新婦の両親が着用する事が多く、あまり頻繁に着用するものではないので、一年を通して着用できる模様になっています。

黒留袖の格

着物はその種類により第一礼装から普段着までの4つの格に分類されます。黒留袖の格はどこに位置づけられているのでしょうか?

第一礼装 打掛、本振袖、黒留袖、喪服など
準礼装 振袖、色留袖、訪問着、付け下げ、色無地など
外出着 小紋、紬、絞りなど
普段着 ウール、銘仙、浴衣など

上の表は、着物の格を表すものです。黒留袖は、着物の中でも最も格の高い第一礼装に位置づけられていて、既婚女性が着用します。

黒留袖の装いのポイント

結婚式で新郎新婦の母親、祖母などが着用する着物です。新郎新婦の友人など、結婚式にゲストで招かれた場合には、身に着けないのがマナーです。

黒留袖に合わせる帯は、金銀または、白の地色に格調高い柄の袋帯を合わせます。帯結びは祝いが重なるように、二重太鼓(にじゅうだいこ)というフォーマルならではの帯結びをします。

半衿や帯揚げは白、帯締めは金銀の入っているものを選びましょう。末広(すえひろ)と呼ばれる礼装用の扇子の金色の面を出して(裏面は銀)帯に差し込みます。

その他、バッグや草履もおめでたい席にふさわしい、品格のある格調の高いものを選びましょう。

黒留袖の歴史


黒留袖の起源は江戸時代までさかのぼります。その頃、未婚女性は振袖を着用し、18歳になるか、または結婚すると長い振袖の袖丈を切って留袖として着用していました。

振袖の丈を「切る」という表現は縁起が悪いため、「袖を留める」という表現になり、それが留袖の語源になりました。

当時は未婚の女性が着る袖の長いものが振袖、既婚の女性が着る袖の短いものが留袖というように、着物の種類が2つに分かれていただけで、色や柄などタイプも様々でした。

そもそも、なぜ既婚女性は袖を短くしたのでしょうか、その理由は以下の通りです。

  • 袖が長いと家事がやりにくい
  • 好意を持つ相手にアピールする必要がなくなるから

袖丈を短くすることで、炊事や洗濯などの家事がやりやすくなるというのは実用的な理由です。

それでは「好意を持つ相手にアピールする必要がなくなる」とはどういう事なのでしょうか?

当時未婚の女性は、好意を寄せる男性ができると、言葉の代わりに振袖の袖を振ることで自分の好意をアピールしていました。結婚すると特定の相手ができるので。袖を振ってアピールする必要がなくなるため、袖を短くしたのです。

切った袖は、とっておいて赤ちゃんが生まれた時の産着にしたと言われています。

19世紀初頭の江戸時代末期ごろに、黒地に五つ紋、裾模様の既婚女性の第一礼装が黒留袖として着物の最上格となり、現在に至ります。

黒留袖の伝統的な柄


ミセスの第一礼装留袖は、お祝い事に着る着物にふさわしく、様々な縁起の良い柄が描かれ、その一つ一つの柄に意味や願いが込められています。留袖などのお祝いの着物に数多く描かれている代表的な柄を紹介しましょう。

「鶴は千年」と言われるように、長寿の象徴です。また、鶴は一度つがいになったら仲良く一生を添い遂げることから、夫婦円満の象徴とも言われ大変縁起の良い柄です。その豪華で美しい姿から多くの留袖のモチーフとして用いられています。

松竹梅

松竹梅もおめでたい柄で、留袖にはよく使われます。松、竹、梅にはそれぞれ以下のような意味合いがあります。

  • 松:例え寒い冬の中でも一年中緑の葉を茂らす
  • 竹:ぐんぐんとまっすぐに育ち、一年中緑のみずみずしい葉を付ける
  • 梅:冬の終わりどの花よりも早く花を開く

長寿や忍耐力、生命の誕生と成長の象徴とされるおめでたい柄です。

熨斗(のし)

熨斗は、昔、結納などのおめでたい席での進物に添えられたもので、この熨斗を、細長く図案化したものを「熨斗紋(のしもん)」と呼び、更に熨斗を束ねたものを「束ね熨斗(たばねのし)」と呼びます。

特に束ね熨斗は縁起物として多くの留袖に描かれ、幸せを周囲の人たちと分かち合うという意味が込められている大変おめでたい柄です。

一つ一つの熨斗には、色とりどりの華やかな模様が描かれています。

鳳凰(ほうおう)

鳳凰は古く中国から伝わった想像上の生き物です。頭は鶏、首は蛇、羽は燕、尾は魚というさまざまな生き物の集合体として優美に描かれ、「誰もが平和で幸せだと感じる世界が訪れると現れる」とされる幸せの前兆です。数多くの留袖に縁起物として描かれています。

平安時代、旧暦の9月9日の菊の節句に宮中で菊の花びらを酒に浮かべて飲み、長寿を祈る風習がありました。

この事から、菊は邪気を払う長寿の象徴としてお祝い事に着る振袖、留袖、訪問着などに多く描かれている定番の模様です。

上記以外にも様々な縁起の良い柄やおめでたい柄があり、その一つ一つに意味や願いが込められています。最近では、これらのおめでたい柄にバラやユリなど洋花のモチーフなどを加えたカラフルな柄や、モダンでおしゃれな現代的な模様の留袖もたくさんあります。

年代別おすすめの柄


黒留袖の柄選びは、あくまでも人それぞれの好みです。こうでなければいけないなどの明確なルールはありませんが、それぞれの年代に合ったおすすめの柄を紹介します。迷った時に参考にしてみてください。

20~30代

20代~30代の若いミセスにおすすめの柄は、ピンクや水色、白など淡い色を使った若々しい柄です。

大ぶりな模様や、模様の範囲が広い華やかな黒留袖は、格式高さの中に、若い人独特のかわいらしさや若々しさを兼ね備えた着物姿を演出することができます。

40~50代

女性としての経験を重ねて来た40代~50代の女性は、留袖を最も格式高く装う事ができる年代です。しっとりと、かつ落ち着きすぎない柄を選びましょう。

鶴や、熨斗、松竹梅などの古典柄で描かれた黒留袖は、お祝いの席にもピッタリで、落ち着いた大人の女性を演出する事ができます。

60代以上

60代以上の女性の魅力は、年を重ねた女性のみがかもし出せるどっしりと落ち着いた風格です。その重厚感を保つためにも、裾の模様は小さめなものを選ぶと全体的に落ち着き、しっくりと年相応の雰囲気に仕上がります。

色柄は、華やかなものよりも古典柄の松竹梅や菊などが描かれた控え目なものを選びましょう。大人の女性独特の渋みが加わります。

黒留袖にまつわるQ&A

訪問着との違い

黒留袖と黒地の訪問着、一見するとよく似ていますが柄のある場所や紋の数に違いがあります。

黒留袖は、必ず背中心、両胸、両外袖に紋がある五つ紋。それに対し訪問着は紋が一つも入っていない紋無しか、背中のみの一つ紋が一般的です。

比翼が付いているかどうかも、黒留袖か訪問着かを見分ける大きなポイントです。黒留袖は比翼が付いていて、訪問着には比翼がありません。

また、黒留袖は上半身には柄が無く、訪問着は襟元から袖にかけて縫い目にまたがって柄が描かれているので、ここを押さえておけばすぐに見分ける事ができます。

黒留袖はレンタルできる?価格は?

黒留袖は、着物専門のレンタルショップなどで気軽にレンタルすることができます。レンタルにかかる費用は、おおよそ10,000~15,000円程です。

それぞれの黒留袖の素材や柄の豪華さにより価格に差があります。素材が絹100%の「正絹(しょうけん)」の黒留袖は、上品な光沢があり着崩れにくいので価格も高めです。一方、ポリエステル等の化学繊維でできた黒留袖は価格もリーズナブルです。

また、柄に金箔が貼り付けられていたり、豪華な刺繍が施されているものはその分価格も更に高くなります。

留袖に合わせる帯や小物、また必ず必要な末広などは、ある程度決まりがあるため、レンタルの場合はだいたい帯、小物、長襦袢から、腰紐、バッグや草履にいたるまでワンセットでレンタルされることがほとんどです。

自分で着れるの?

もちろん着付けの経験があれば、自分で黒留袖を着る事もできます。しかし、大切なお祝い事の際に身に着ける場合が多く、お客様をお招きする大切な立場として着用するので、着崩れたら大変です。

特に黒留袖は、比翼が付いているため、他の着物よりも着用が難しく、少しでも不安がある場合には、熟練の着付け技術がある人や、着付け師さんにお願いするのが安心です。

黒留袖をレンタルする場合は、当日お店で着付けを無料で行ってくれるサービスなどもあるので、あらかじめ確認しておきましょう。

まとめ

黒留袖に関する知識を身につけておけば、結婚式の際に新郎新婦の母親としてゲストをお迎えする際にも安心して着用することができます。大切な節目に着る黒留袖です、柄選び、着付けなど失敗のないように、万全の注意をして臨みましょう。