洋服と同じように、着物にもサイズがあることをご存じでしょうか?
着物は洋服に比べて許容サイズは広いものの、自分の体に極端に合っていない着物を選んでしまうと「せっかく気に入って買ったのに着れない!」なんて事も起こりかねません。
そこで、今回の記事では女性の着物に限定して、基礎的な「着物の各部のサイズについての解説」から、自分に合った着物を選ぶための「サイズ」の測り方、また、サイズの合わない着物を上手く着こなす着付けのコツなどを解説していきます。
お気に入りの一枚を見つけるために、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
着物のサイズを確認する
まずは、着物のサイズに関するいくつかの用語について解説していきます。
身丈(みたけ)とは
身丈(みたけ)とは、簡単にいうと、上から下までの着物の長さの事です。
正確には、背中心(せちゅうしん・着物の背中側、左右の見ごろの縫い目)の衿の付け根の部分から裾までの長さを指します。
身丈が短いと、おはしょり(着物を着た時に帯の下から出る着物地)をキレイに作る事ができません。
逆に長い場合はおはしょりが長くなり、間延びした印象になってしまったり、余った部分を帯の中に折り込まなければいけなくなるため腹周りがゴロゴロしてしまいます。
裄丈(ゆきたけ)とは
着物の肩巾(背中心から肩までの長さ)と、袖巾(肩から袖口までの長さ)を足した長さを裄丈といいます。
着物を着た時に、袖口が手首のくるぶしくらいの長さになるのが理想的なサイズです。
戦後に作られたアンティーク着物などの多くは、裄の長さが短めです。
裄丈が短すぎると腕が見えすぎてしまい、「つんつるてん」なイメージに、また長いと手の甲が隠れてしまい、どちらも不格好に見えてしまいます。
身幅(みはば)とは
身幅(みはば)とは、腰回りの長さの事です。
下前(着た時に下になる前身ごろ)は着物を着た時には、上前(着た時に上になる前見ごろ)に隠れてしまいます。したがって身幅の長さは
(後ろ幅×2)+前幅+衽(おくみ)幅
の事をいいます。
身幅が適切な寸法よりも少ないと、下前(着物を着た時に下になる身頃)と上前(着物を着た時に上になる身頃)の重なる部分が少なくなり、裾がはだけやすくなってしまいまうので、注意が必要です。
逆に、身幅が長い場合は胴に巻き付ける下前が長くなり、余分な下前が体の後ろまで周ってしまうので、歩きづらくなってしまいます。
自分のサイズを確認する
ジャストサイズの着物を選ぶために、まずは自分のサイズを確認しましょう。
身丈はほぼ身長
身丈は自分の身長±5cmのものを選ぶのがベストです。
着物を羽織った時に、床から20cmくらい裾が長くなるのが目安になります。この余った部分がおはしょり(帯の下に出る着物地)になります。
裄丈は首のつけ根~肩+腕の長さ
裄丈の長さは、自分の背中の首のつけ根から肩先までの長さと、肩先から手首のくるぶしまでの長さを足した長さです。
自分の寸法±3cmくらいの裄丈が理想的なサイズになります。
身幅はヒップ周り
着物の身幅は、自分の体の一番太い部分「腰回り」+3cmくらいのものが適切な長さです。
着物の下には肌着、長襦袢を着用します。
したがって、腰回りのジャストサイズではなくて、3cm程プラスした身幅のものを選ぶと丁度よいでしょう。
サイズが合わなくても調整できる
自分の体にぴったり合ったサイズの着物を着るに越したことはありませんが、万が一サイズが合わなかったらどうしたらよいのでしょうか?
多少の誤差であれば、着物の着方次第である程度調整することができます。
身丈が合わないときの対処法
身丈が合わない着物を着るときにはどのような点に注意すれば良いのでしょうか?
身丈が短い場合
身丈が短い着物を着る時のポイントは以下の通りです。
- おはしょりが少しだけ足りない時は、腰ひもの位置をいつもより低くする
- 身丈が極端に短い場合は、対丈で着る
- ブーツなどを合わせてわざと丈を短く着る
おはしょりの長さが少し足りない場合(適切な身丈-5cm程)には、腰ひもの位置をいつもより低くしましょう。こうすることによって、おはしょりの下線も下がり、帯の下からきれいにおはしょりを出すことができます。
腰ひもの位置を低くしても、どうしてもおはしょりが作れない場合には、対丈(ついたけ)で着るのもOKです。対丈とはおはしょりを作らず、羽織ったままの長さで着物を着る事です。
また、ブーツを合わせれば、身丈が短いという欠点をおしゃれにカバーすることが可能です。わざと丈を短く「和モダン」に着物姿を演出すれば、おしゃれかつ動きやすい着こなしとなるでしょう。
身丈が長い場合
身丈が長い分には、全く問題なく着る事ができます。
おはしょりとして帯の下に出る部分だけをきれいに整えて、余分な部分は帯を締める部分にしまい込んでしまいましょう。
ただ、身丈が長いという場合は、そもそもの着物のサイズが大きいケースも多いので、裄丈や、身幅も大きく少し着づらさを感じるかもしれません。
裄丈が合わないときの対処法
裄丈のサイズが合わない場合には、どのように工夫すればよいのでしょうか?
裄丈が短い場合
裄丈が短い着物を着る時には以下の3点に気をつけましょう。
- 首のサイドと半衿の間隔を広げる
- 耳の下の部分の着物は少し半衿から外側に離す
- 衿幅を広げて衿合わせする
以上を行う事で合計3cm程は着用時の裄を伸ばす事が可能です。
首のサイドと半襟の間隔をいつもよりも広げて着る事で、その分着物の衿の始点が首から離れ、裄丈も下に下がります。
通常、耳の下では半衿と着物は同じ高さが良いとされていますが、着物を少し外側に離すことにより更に着物の衿の始点が下がり、裄の長さが長くなります。刺繍衿などを付けてあたかもそれをアピールしているというイメージで着用するとより自然です。
更に、着物の衿幅も通常は耳の下では半分の幅に折り込みますが、衿幅を浅く折り込む事で、裄丈を長く見せる事ができます。
裄丈が長い場合
裄丈が長い着物を着る際に気を付けたいポイントは「着物の衿幅を狭くすること」です。
衿幅を狭くした分、裄が少しだけ短くなります。
ただ、衿幅を短くしただけでは1cmも短くすることができません。肩、袖の部分は長い部分を折りたたんだり、袖をまくったりすることが出来ないからです。
着物を着た時に手の甲が隠れてしまうような明らかに長い裄丈の着物はサイズオーバーです。不格好に見えてしまうため、おすすめはできません。
身幅が合わないときの対処法
身幅のサイズが自分の寸法と合っていない場合の対処法は以下の通りです。
身幅が小さい場合
身幅を着方で調節できるのは、自分の身幅の寸法-5cmまでです。
身幅が小さいという事は、前幅+衽の幅が体の幅よりも狭いという事になります。
身幅が小さいと、上前の端、左の脇縫線が脇よりも前方に来るため、後ろ身ごろが前方に来てしまい太って見えてしまう原因にも。また、座ったり、歩いたりするとはだけやすくなってしまいます。
それでもどうしてもその着物を着たいという場合には少し工夫が必要です。
- はだけやすくなる下前をコーリンベルトで固定する
- 下前の端を安全ピンで長襦袢に止める
下前の端、膝の少し上くらいにコーリンベルトをはさみ、長襦袢の上を通って着物の裏で左巻きに一周させ、襦袢の左脇のどこかにもう一方のクリップをはさんで固定する事で、下前がはだけにくくなります。
また、下前の端を安全ピンで長襦袢に止める事でも、万が一はだけてしまった時に長襦袢が見えてしまうリスクを少なくすることができます。
身幅が足りない事が原因で、外出先で着物がはだけてしまうのは、大変不格好です。
外出先で恥ずかしい思いをしないためにも、あらかじめ自宅で着てみて、歩いてみたり、座ったりした時に、着物がはだけないかどうかチェックしておきましょう。
身幅が大きい場合
身幅が大きい場合は、小さい時よりもある程度ラクに調節することができます。
余分な部分は、多めに胴に巻きつけたり、脇でタックを取ったりして簡単に調節する事ができるからです。
ただ、下前を巻きつける時に、体の後ろ側まで下前をまわしてしまうと、歩きにくくなってしまうので、余分な部分は歩きやすいように手前に折り返しておきましょう。
サイズの合わない着物は仕立て直しやサイズ直しも可能
ここまでサイズの合わない着物を何とか上手く調節して着る方法を解説しましたが、これはあくまでも「ちょうじり合わせ」にすぎません。いわば苦肉の策です。
とても気に入った着物で、頻繁に着る機会がある場合には、費用はかかりますが「仕立て直し」や「寸法直し」という方法も考えましょう。自分の寸法に合った着物なら、手間をかけずきれいに着ることができます。
「仕立て直し」とは、着物を一度全て解き、反物の状態に戻してから改めて仕立て直す事。
また、「寸法直し」とは、身幅、身丈、裄などの部分的な長さを調整することです。
ただ、自分の寸法に合わせて仕立て直しや寸法直しが行えるかどうかは、着物の状態(大きな着物か、縫い代を多めに取ってある着物か)等によって違うので、一度呉服店や着物のお直し専門店に相談すると良いでしょう。
まとめ:マイサイズを知っておけば怖くない
着物を選ぶ際には、好みの柄や色と同様に、適正なサイズ選びも大切なポイントです。
気に入った着物が自分の寸法に合ったものかどうか、しっかりとマイサイズを把握して体形に合ったお気に入りの一枚を見つけてください。
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