着物基礎知識

大島紬とは?特徴や柄の種類、見分け方から買取相場まで総まとめ

着物の紬の中にも様々な種類のものがあります。

20種類以上の紬がありますが、その中でも大島紬は着物通だけでなく多くの人々の関心を集めてきました。

しかし、大島紬とは一体何かを問われたときに、はっきりと答えられる人は多くありません。

そこで今回は、大島紬とはそもそも何なのか、どんな着物なのかということに焦点を当て、大島紬の特徴はもちろん、買取価格までをご説明します。


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大島紬とは?

大島紬は奄美大島(鹿児島県)を発祥の地・本場生産地とする絹織物。
約1,300年の歴史を誇り、日本の伝統工芸品に指定されています。

絹100%を使用し、織る前に糸を染める先染め、手織りの平織りで、絣合わせをして織り上げたものです。
優雅な光沢を持ち、しなやかで軽く、シワになりにくいという特徴があります。

大島紬の起源は定かではありませんが、正倉院の書物の中に“南方から赤褐色の着物が献上された”という記述があることから、1300年前にはすでに奄美では文化として根付いていたと言われています。

1720年頃には薩摩藩を治める島津氏がその価値に着目。
島民に「紬着用禁止令」が出され、高級織物として上納品に定められました。

現在は日本の民族衣装を代表する着物の女王とも言われており、独特の黒褐色を基調とした繊細な折柄の美しさも評価され、日本の絹織物のうちでも高級品として知られています。

大島紬の特徴


まず大島紬の特徴についてここで簡単にまとめていきます。

紬は産地別に特徴が分かれるので、大島紬ならではの特徴もおさえていきましょう。

しなやかで軽くて丈夫

大島紬は、紬の中でも特に丈夫な着物として知られており、200年は心配なく着ることができるほど丈夫と言われています。

なぜこれほどまでに丈夫に作られるのかというと、大島紬に用いられる染めの技法にその秘密がありました。

大島紬、特に奄美大島で製織される本場大島紬は、泥染めが基本です。

そもそも紬は先に糸を染めてから織る先染めの着物になりますが、大島紬はこの染色を植物や泥を用いて行います。

何度も何度も草木や泥に染めるうちに絹糸が弾力を持ち、どんどん丈夫になっていくというわけです。

泥染めから生まれる美しい光沢

紬にも大きく分けて二つの種類、光沢を持つ艶のあるタイプと、ざっくりと糸の味わいが出る素朴な風合いのあるタイプが存在するのです。

大島紬は光沢を持つタイプに分類されます。

同じ紬でもなぜこのような違いが出てくるかは、糸の精製方法に違いがあるからです。光沢のあるタイプは、煮出した繭からそのまま糸を引き出して織る方法を取っています。

大島紬は、主流の泥染めが一層紬の光沢に磨きをかけているとされています。

ちなみに、泥染めとは、テーチキで糸を染め、鉄分の多い泥で媒染する染料法です。

紬が禁止されていた江戸時代に、着物をとっさに隠すに当たって見つかりにくい泥に紛れ込ませたのが始まりだったようです。

泥に付けたところ、なんとも美しい光沢が出たこと、色合いに渋みが増して良かったことから、泥に浸ける方法が浸透したと言います。

大島紬の特徴であるこっくりとした黒色や焦げ茶色も、泥染めの工程で生まれるものです。

手間暇掛けて作られたものだからこそ、渋みと絹糸の美しさが見事にマッチした美しい織物になるのです。

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大島紬の柄


紬の柄は縞や格子、絣が代表的です。

大島紬にももちろん、縞、格子、絣柄のものは存在しますが、それ以外にも様々な紋様が織り出されています。

代表的な紋様

大島紬によく見られるのは、細やかな十字絣で草木や幾何文を織り出した紋様です。

龍郷柄や秋名バラ柄、有馬柄、西郷柄、亀甲柄などは大島紬の代表的な柄にも挙げられます。

他にも最近では、花鳥紋様や日本の伝統的な柄が織り出されたものも多く見られるようになりました。

絶えず人々のニーズに合わせて柄行を変化させているそうです。

柄の大きさ

大島紬の柄の大きさは男性ものと女性もので変わってきます。

女性ものの方が柄は大きく、はっきりとした柄行のものが多く見られます。

対する男性物は、小柄の紋様が多く、細かくあまりはっきりと目立たないものが多くなっています。

絣の細かさとマルキ

紬は絣の細かさによって、高級度が変わってきます。

その絣の細かさは、反物の一幅に何マルキ必要かで比べます。

マルキが多くなればそれだけ高価な紬であるということになるわけです。

ところで、マルキとは経絣糸の本数を表す単位を指します。

1マルキは80本を意味し、現在の大島紬は7マルキ、9マルキ、12マルキが多く流通しています。

7マルキよりは9マルキの方が絣も細かく、それだけ高価になるということです。

大島紬の歴史

大島紬は、結城紬や塩沢紬と並び日本三大紬の一つに数えられることで知られていますが、実は世界三大織物の一つにも数えられるスーパー織物でもあるのです。

世界三大織物と言えば、フランスのゴブラン織、イランのペルシャ絨毯があります。

いずれもその丈夫さと歴史、技法の細かさに定評があります。

大島紬の歴史は、今から1300年以上前に遡ることができると言われるほどの長い歴史を有しています。

元々養蚕地帯であった奄美大島では早くから絹織物が発達していた他、南国の豊かな大地で自生した植物を用いた染色技法も進んでいました。

こうした条件の下で絹織物精製が発展し、それがいつしか大島紬という形で伝統的な平織物になっていったのです。

それは大体1700年ごろだったと言われています。

そして、1975年には経済産業大臣指定伝統工芸品、いわゆる伝統工芸品に認定されました。

大島紬の産地


大島紬の産地は実はいくつか存在します。

本場は奄美大島ですが、そこから九州へ職人が渡り、九州本土でも大島紬が栄えました。

発祥の地、奄美大島

大島紬と言えば、鹿児島県奄美大島の名瀬市を中心に織られる絹の平織物と長く認識されてきました。

今でも本場ものの大島紬と言えば、この奄美大島産、泥大島を指すことがほとんどです。

奄美大島以外の産地

奄美大島以外でも大島紬は織られています。

鹿児島県鹿児島市で織られる大島紬も有名で、鹿児島市以外にも宮崎県などで大島紬は織られています。

なぜ、奄美大島以外でも大島紬が織られるようになったのかというと、その背景には戦争が大きく絡んでいます。

第二次世界大戦で本土に逃げざるを得なくなった職人を通じ、鹿児島県(鹿児島市)や近隣の県で大島紬は発展しました。

鹿児島県鹿児島市を中心に織られる大島紬は泥大島以外のバリエーションも豊富で、白大島、草木染め、藍大島、泥藍大島、化学染料染めなどがあります。

海外の産地

実は、大島紬には日本の国産物以外に外国産のものがあります。

それは韓国産で、昭和時代に紬の需要が伸びたために生産量を増やすべく、韓国の手も借りたという背景によるものです。

今現在も韓国産は作られ続けていますが、全盛期に比べてればその数もかなり減ってきていると言います。

ちなみに、技法は伝統的な大島紬を真似たものがほとんどで、本場の技法がそっくりそのまま用いられているというわけではありません。

そのため、証紙にも伝統品を表すものは無く、その代わりに「韓国製」という表示が見られます。

さまざまな大島紬!?

「大島」という名がつく織物は、他にもいろいろあるのです。大島紬の仲間であったり、全く別のものであったり…。

違いを押さえて、より大島紬に詳しくなりましょう。

藍大島

藍大島は、鹿児島地方で生産されていた藍色の大島紬です。

大島紬は泥染めの黒地を基調とした色合いですが、染色方法や種別などによってさまざまな種類があります。

藍大島は、染色方法によって分類されたものです。

本絹糸を植物藍を発酵してつくった藍液で藍染めして糸が作られます。藍染めの地糸と藍色の地糸に絣を織り出した絣糸を交互に織り込んでいます。

戦前は多く作られていましたが、色落ちがあるためあまり作られなくなり今では大変貴重となっています。

夏大島

夏大島とは、泥染めの大島紬の中でも透け感を特徴としたもので、梅雨から夏本番までの時期の着物として知られています。

その軽さや冷感のある肌触りが心地よく、セミフォーマルから普段着まで多岐にわたって利用できるのも嬉しい特徴です。

経糸、緯糸ともに強く撚られることで、薄物特有の鋭い光沢が生まれます。

高密度で生糸を織る大島紬に対し、夏大島は低密度で駒糸を織り上げます。

この技術が独特の薄さをもたらします。糸と糸の間に隙間があることで、汗をかいても生地が肌にまとわりつくことはありません。

男性用に最適な格子のデザインから、華やかなろうけつ染めまで様々な柄を楽しむことができます。

現在は昭和21年から呉服製造卸業を営む廣田紬株式会社を中心に、毎年さまざまなデザインの反物が生産されています。

村山大島紬

村山大島紬とは、東京都の武蔵村山市で伝統的に作られてきた紬で、板締での染色という特徴的な技法が用いられています。

板締とは、模様が彫刻された木板で地糸と絹糸を別々の色に染めることです。

染められたそれぞれの糸が平織りされると、艶のある美しい幾何学模様が浮かびあがってきます。これらの模様は「かすり模様」と呼ばれ、国と東京都が伝統工芸品に指定してます。

東京都と埼玉県をまたぐ村山地域は、江戸時代から木綿紺絣の産地として知られていました。

大正時代に群馬県の伊勢崎市から板締の技法が伝わると、その技術が組み合わされた織物の生産が盛んになりました。

それはやがて「村山大島紬」という名で知られるようになります。

1930年代と、糸へん景気が訪れた1950年が生産の全盛期で、現在は生産者が少ないものの20人の工芸士によって受け継がれています。

大島紬の有名な作家


大島紬がこれほど有名になり紬を代表する存在にまでなったのには、大島紬に命を懸けた作家たちの努力があったからに他なりません。

ここでは特に大島紬で有名な作家を二人ご紹介します。

都喜ヱ門氏

大島紬の伝統を守り発展させた人物です。

彼の功績があったからこそ我々は今大島紬を心の底から楽しむことができるのだと言っても過言ではありません。

都喜ヱ門氏は「紬一つをわが命とぞする」を信念に大島紬に心血注いだ人物で、大島紬の伝統的な技法を元に新たな図柄や染色の技法を開発・発展させました。

1973年には自身の名前を冠した「都喜ヱ門ブランド」を展開し、多彩な色と絵画のような美しい図柄の大島紬を多数作りました。

作品はどれも綿密さと緻密さが秀でており、傑作とされています。

都喜ヱ門氏の作った大島紬のコレクションは、奄美大島にある「都喜ヱ門美術館」で見ることができます。

益田勇吉氏

現代の大島紬の発展に日々勤しんでいるのが、益田勇吉氏です。

益田氏は、白大島(火山灰の白泥を用いて染めたもの)に泥大島のようなしなやかさを加えた白恵泥と呼ばれる新たな製法の開発に携わり、これを元に創作大島紬を多数作り出しています。

白地に淡い青色で図柄を表現していく、シンプルな美しさを追求したものであり、紬の素朴さが感じられるものに仕上がっています。

大島紬は一つの反物を織るのに1年もかかると言われています。近年は織る人の高齢化が著しく、長期間に渡る製作期間が負担になっているという課題がありました。

益田氏はその課題を改善する織りの方法や技法などの研究にも熱心に取り組んでおり、大島紬の伝統を守るべく日々精進されているのです。

大島紬の着用シーン


大島紬は元々普段着として活用されていた着物ですが、時代を経て普段着から街着に格が上がりました。

今では高級紬としてセミフォーマルな場でも楽しまれる着物になっています。

大島紬は紬であって紬でない?

大島紬という名称に「紬」が付いていることからも分かるように、元々は真綿や屑繭から紡いで作った紬糸を用いて織られていました。

しかし、明治時代初期からは経に絹糸、緯に紬糸を用いるようになり、それが今では経緯共に絹糸で織られるようになったことから、正確には「紬」といえなくなっているのです。

今なお大島紬という名称が用いられているのは慣例に倣ってというところが大きいのですが、人々の混乱を招かないようにするため、また大島紬のこれまでの歴史に敬意を表して、使っているそうです。

着物愛好家には憧れのおしゃれ

大島紬は日本三大紬の一つであり、紬の中でも高級品に位置付けられる着物として知られています。

「紬を着こなしてこそ、きもの好き」という言葉があるように、紬を様々な場で楽しむのが着物愛好家の着物遊びでもあると言います。

同じ大島紬でも、染めの名古屋帯を合わせればカジュアルに、織りの名古屋帯を合わせればおしゃれ着にとアレンジを楽しめるのです。

更に、袋帯を合わせればセミフォーマルな装いとして、ちょっとしたパーティーにも着ていくことができるので、大変便利な着物として人気が高いです。

結婚式には着ていいの?

大島紬は、結城紬などに比べると光沢感が優れており、フォーマルな場でも決して見劣りしない着物とされています。

元々大島紬は他の紬同様、絣などの紋様が主流でした。しかし最近では絵羽模様も多く描かれるようになり、よりフォーマルスタイルに近い大島紬が作られるようになりました。

訪問着仕立てになっている絵羽模様が華やかな大島紬などは、格式高い錦織の袋帯と合わせることでフォーマルな場でも十分相応しい装いになります。

結婚式などのおめでたい席でも、気品と華やかさを演出し、お祝いに花を添えてくれることでしょう。

大島紬の見分け方

大島紬にも様々な産地があることが分かりました。

しかし、大島紬を何種類か並べられたところで、どれがどの産地のものなのかを正確に言い当てることは着物通の人でも無理があります。

そこで見分ける手がかりとなるのは、反物に付けられている証紙です。

証紙を見分ける

画像引用元:本場奄美大島紬NEXTプロジェクト

大島紬の証紙は、本場奄美大島産のものと鹿児島県産のものとでは大きく異なります。

奄美大島のものには地球印のラベル(上図)が付けられています。

地球印は、この大島紬が奄美大島で製織されたものであるという証です。さらに、奄美大島紬の特徴とも言える染めの技法に関するラベルも存在します。松皮菱のラベルは泥染めの証であり、これがあることでれっきとした泥大島なのか否かなのかがはっきり分かるのです。

対する鹿児島県産の大島紬には、日の丸の旗印のラベル(下図)が付けられています。

この旗印ラベルが付けられていれば、鹿児島で製織された大島紬である証になります。鹿児島の大島紬でも泥大島のものであれば、上記の松皮菱ラベルが付けられているはずなので、自分が持っている大島紬の技法が気になる方は確認してみましょう。

伝統的工芸品のマーク

伝統的工芸品のシンボルマーク

画像引用元:伝統的工芸品産業振興協会

経済産業省が指定する伝統的工芸品。

伝統的工芸品に指定されるには下記の条件があり、すべてクリアしたものだけが伝統的工芸品のマーク(上図)を付けることができます。

  • 絹100%のものであること
  • 先染めものであること
  • 手織りであること
  • 平織りであること
  • 絣糸は織締めで染色すること

このうちの一つでも条件に合致しない場合は、同じ本場大島紬であっても伝統工芸品のマークを受けることはできません。

ちなみに、各都道府県が指定する伝統工芸品や郷土工芸品もあり、マークは都道府県によって異なります。

いずれのラベルであっても伝統工芸品を証明するものとなっています。

大島紬の買取相場と口コミ


ここまで大島紬の特徴や製造技法などについて見てきましたが、実際のお値段や相場がどれぐらいなのか、気になってきたことでしょう。

実際に買取経験のある人の口コミも見つつ、買取相場を確認していきましょう。

買取相場

現在は高級品として知られる大島紬も、染め技法や絣の細かさで値段が大きく変わってきます。

先に、大島紬は絣の細かさによって高級度が変わってくるということを述べましたが、同じ本場大島紬であっても、絣の大きさが細かいか否かで値段に差が出てくるのです。

気になる買取価格の相場は下記の通り。買取価格は状態によってばらつきがあるため、あくまで参考としてください。

大島紬の買取相場 5,000円程度~200,000円前後
手織り 上記+30,000円程度
証紙付き 上記+40,000円程度
有名作家 上記+50,000円程度
本場大島紬 上記+100,000円程度

【注意】保存状態や種類によって価格は変動する

実際の買取価格は、保存状態や作家や産地などによって変動します。保存状態が良く伝統工芸品の本場大島紬には相場より高い値が付くこともあるでしょう。汚れの目立つものだと買取不可ということも。

お手元の大島紬が実際にいくらになるのかは査定に出してみないとわかりません。まずは無料査定に出してみることをおすすめします。

実際に買取を行った人の口コミ

実際に買取を行った人の口コミを以下にいくつかご紹介します。

かなり古いものでしたが、しっかり査定頂き、予想以上の額で買取して頂けました。
着物の知識が全くなく高級品かどうかすら分かりませんでしたが、ラベルが付いていたのでブランド物と認定頂き、高額で取引することができました。
母からは100万以上する着物だからと口うるさく言われていたので、さぞ高く買取してもらえることと思っていたら、証紙が無かったためにブランドものだと理解されず、予想以上に低い価格での取引となってしまいました。
大島紬にも色々なものがあることを教えてもらいました。残念ながら私が持っていたものは国産でも無かったので、ブランド品としては扱ってもらえませんでした。
貴重な泥大島ということで、虫食いなどあったのですが、10万以上で買取して頂けました。

口コミからも分かるように、ブランドものであることを証明する証紙の存在はとても大切です。

高額な値での買取を実現させる基本として、着物の状態が良いことはもちろんですが、ブランド物を意味する証紙があるのであれば、それもしっかり提示できるようにしておきましょう。

まとめ

大島紬と言っても、産地が一つ以上あること、様々な染色技法があることなどが分かりましたね。

自分の大島紬はどういうものか気になった方は、是非着物に付いてきた証紙を確認してみましょう。

買取に出そうかなと思っている着物があるならば、それが伝統工芸品なのか、ブランドものの大島紬なのかを確認し、全ての証紙もしっかり集めておくと良いでしょう。