着物基礎知識

着物の定番柄40種類を解説。柄の意味や由来を知ってもっと着物を楽しもう。

着物は洋服と違い、柄(文様)の種類が豊富です。

洋服の柄であれば花柄、チェック柄、水玉模様あたりが代表的なところでしょうか。

ひとくちに「柄」といっても、着物の文様は写実的なものから、図案化されたものまで多種多様です。

梅を例にあげると、絵画のように写実的に描いた梅、花芯をひねったように図案化して描かれる捻梅、花芯を5つの正円で囲んだ図案の梅鉢など…。梅だけでもこんなにあるのです。

そして、古くから描かれる着物の文様には、それぞれに由来や意味が込められています。
この記事では、写実・図案を問わず着物の柄について意味や由来をさっくりと解説しています。


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古典柄

毬(まり)

多色使いの糸を巻き付け、文様をあらわした毬は、可愛らしさだけでなく、女児の健康を願い、成長を祝う文様です。

お宮参りの産着や七五三の女の子の晴れ着、若い女性むけの振袖や帯に多く使われている文様です。

薬玉(くすだま)

鞠に蝶結びなどの房が下がったように描かれます。

端午の節句で菖蒲や蓬などを詰め、花と糸で飾り無病息災を祈る魔よけの5色の糸を下げます。平安時代に男性から女性に送られるようになり、女の子の幸せと無病息災の両方がこめられた文様となりました。

扇(おうぎ)・地紙(じがみ)・檜扇(ひおうぎ)

扇は骨のあるもの、地紙は扇の紙の部分のみのもの、檜扇は平安時代から宮中でつかわれた木製の扇のことを指します。

要から組みひもと房が下がっており、扇や地紙より雅やかで高貴な柄となります。いずれもお祝い事にぴったりの、末広がりの栄達や円満を意味します。

貝桶(かいおけ)・貝合わせ

はまぐりは、一枚の貝がほかのものとは決してあわないことから、夫婦円満の象徴とされました。

平安時代の上流階級の遊びにある貝合わせ、それを入れる貝桶は嫁入り道具の一つでした。婚礼、夫婦円満、女の子の節句であるひな祭りの春の文様でもあります。

御所車(ごしょぐるま)・花車(はなぐるま)

百花とともに描かれることの多い御所車は公家が乗っていた牛車を文様化したものです。

どちらも雅やかで華やぎのある吉祥文様です。特に花車は、御所車に花があしらわれた文様なのでよりいっそう華やかさが感じられます。

源氏車(げんじぐるま)・片輪車(かたわぐるま)

牛車の車(車輪)を文様化したものです。

回転するところから、永遠の意味をもちます。片輪車は源氏車と流水や波とともに描かれます。平安時代に、木でできている源氏車の乾燥を防ぐために水に浸けたことに由来します。

宝尽くし

打ち出の小槌や如意宝珠、隠れ蓑、丁子、鍵、巻物などを描いた吉祥文様です。

もとは中国の吉祥思想の八宝に由来します。日本に伝わり、独自の宝物も加えて、宝尽くしの文様に発展しました。お祝いごとや祝儀、ハレの日にぴったりの文様です。

熨斗(のし)・束ね熨斗(たばねのし)

現代の「のし袋」の熨斗です。もとは、のしあわびのことでした。

アワビを細く切って伸ばし干して乾かしたものです。古来より伊勢神宮に奉納され、長寿をもたらす食べ物とされたアワビは、縁起物とされます。

花の柄

日本を代表する花、春の象徴の花です。

写実的な柄は桜の季節に、図案化されたものは通年とされてきましたが、この頃では日本の国花なので気にせずに通年着ましょうという風潮になってきました。

中国から伝わった菊の花は、黄色の放射線状の姿から太陽の象徴であり君子のようとされ、高貴な花とされました。

高貴な花であり、延命長寿、邪気払い、無病息災などの意味がある吉祥文様とされました。

平安時代は花といえば梅のことでした。

厳しい冬のさなか、香り高く花を咲かせるところから、高潔な花木として尊ばれました。また、新年をむかえて一番に咲くことも縁起がよいとされ、吉祥文様とされています。

牡丹

牡丹は百花の王といわれ、そのあでやかな姿から富貴・高貴・幸福を表します。

また、「丹」の字に不老不死の仙薬の意味があることから、長寿の意味もあります。花の季節は春から初夏ですが、寒牡丹のように雪とともに描かれた柄は、冬の季節の柄となります。

撫子

夏に咲く草の花です。

大和撫子(やまとなでしこ)の言葉の通り、かわいい子という意味があります。撫子の花は、赤・ピンク・白と可愛らしい色で、「撫でるようにかわいがる愛し児」が由来といわれています。

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動物の柄

中国で千年生きる瑞鳥として尊ばれました。

日本では、純白の羽と登頂の赤を持ち、飛ぶ姿も立つ姿も美しい鶴は、生命力や長寿の願いが込められた吉祥文様の代表格となりました。

長寿のほか、その美しい姿から高貴の意味も持ちます。

中国で1万年生きるとされ長寿と不死の意味を持ちます。

中国伝承の四神将の1人玄武は、北の守護神で亀に蛇が巻き付いた姿で表されます。また、中国神話のひとつでは、世界を支えているのも亀とされています。

亀は、長寿・不老のほかに、神聖の意味も持ちます。

兎(うさぎ)

日本では、うさぎは月で餅をついているとされますが、中国では、うさぎは月で不老長寿の神薬を作っているとされます。そこから、不老長寿の意味を持ちます。

また、長い耳は福を、飛び跳ねるさまは躍進、繁殖力からは子孫繁栄の願いも込められています。

鴛鴦(おしどり)

言わずと知れた夫婦円満の象徴です。

鴛はおしどりの雄、鴦は鴛鴦の雌を表します。鴛鴦は、常に雌雄一緒に過ごし、生涯ほかのものとは番いにならないとされていることから、夫婦円満の意味があります。

鳳凰(ほうおう)

中国神話の霊鳥で、桐に住み、60年に一度花を咲かせる竹の実を食指し、天子が善行を施すと現れる、徳の高い天子が帝位につくときに現れる瑞鳥とされています。

高貴、祝福などの意味があります。

幼虫から蛹(さなぎ)へ、そして蝶へと姿を変えることから、転生・再生、不老不死の象徴として尊ばれました。

また、天高く上ように舞うさまは、高みを目指す立身出世の意味も持ちます。

急流の滝を上った鯉は、登竜門を通り、天まで登り龍となるという中国の故事から、立身出世の象徴とされます。

この鯉の滝登りは、鯉のぼりのルーツでもあります。小さい男の子なら入覚や進学、成人男性なら昇進や昇格のお祝いにぴったりな柄です。

蜻蛉(とんぼ)

夏物や浴衣に描かれることの多い、夏から秋の柄の代表です。

また、古くは古事記に登場し、勝虫(かちむし)とも呼ばれ、すばやく、決して後には進まないことから「不転退」「勝つ」という意味を持つ縁起ものとされました。

自然の柄

雲・瑞雲(ずいうん)・雲間(くもま)

仙人の乗り物でもある雲は、吉祥のひとつとされます。

特に縁起が良いとされる雲の形を図案化した瑞雲は代表的な吉祥文様のひとつです。また、雲は天へとつながるので、神聖の意味もあり、慶弔の両方に使われる柄でもあります。

流水(りゅうすい)・観世水(かんぜみず・かんぜすい)

水の流れるさまを描いた文様です。

流れる水は、清め、祓いの意味があります。また、涼しさや清らかさを醸すために描かれることもあります。観世水は、流水を楕円に様式化したものです。

波・波頭(なみがしら)

繰り返し果てることなく寄せて返す波は、永遠、不滅、誕生、長寿を意味します。

激しいしぶきの波頭、穏やかな波など、描かれ方はさまざまです。また、波は涼しさも感じさせるので、初夏から夏場の着物や帯にも多く使われます。

ヱ霞(えがすみ)

文様化された霞です。

「ヱ」のかたちに見えることからヱ霞の名がつけられました。水の変化したものの一つでもある霞も、雲と同様に神聖、吉祥の意味も込められています。

基本的には春の柄ですが、季節を地わず他の柄と組み合わせて使われることが多い柄です。

蓬莱山(ほうらいさん)

空には鶴が、海には亀が、周りには松竹梅が茂り、不老不死の仙人が住むという中国の伝説の理想郷の山です。

俗人は近づけないとされました。神聖、不老長寿の意味を持つ吉祥文様です。

植物の柄

常緑樹である松は、変わらない緑の姿が縁起が良いとされ、延命長寿の象徴とされる吉祥文様の代表格です。

若さをあらわす若松、年を重ねた落ち着きや経年をたたえる老松、扇の形に描き、末広がりの意味も持たせる扇松など、多くの柄があります。

楓・紅葉

秋を表す代表の柄です。

青紅葉は初夏を、紅葉は秋を表す団長的な文様です。青から赤へ色を変える紅葉は、変化をあらわすとも言われています。青紅葉と紅葉がともに描かれているものは、春から晩秋まで長く着用できます。

古代中国の伝説では、瑞鳥の鳳凰は桐に住み、竹の実を食べるとされました。

高貴、権威の意味を持ちます。また、桐は生命力にあふれており、おどろくほど成長が早い木でもあるので、成長祈願の願いも込められています。

まっすぐ伸びる姿から、成長祈願の意味を持ちます。

また、その青さから清浄、旺盛に伸びる姿から威勢、節のある所から節度と、縁起のよいものの代表格であり、吉祥文様の代表格でもあります。

稲穂

着物の文様に使われるようになったのは、江戸時代以降と比較的あたらしく、金色に実り、こうべを垂れる姿は、豊穣、富貴、瑞祥を意味します。

田に実るさまのほか、刈り取った束や珍しい俵の柄もあります。

葡萄

葡萄の木の蔦と葉が旺盛に茂るさまが発展や繁栄を、また多くの粒が房状に実るさまは、子孫繁栄の象徴とされました。

帯や着物の柄は、葡萄の実のみではなく、蔦と葉もともに描かれることがほとんどです。

橘(たちばな)

常に緑の常緑樹で、実をつけたまま次の開花を迎えるすがたが縁起がよいとされました。

また、古事記では、常世の国からもたらされたとされることから、不老長寿と子孫繁栄、子宝の意味も持ちます。

南天(なんてん)

なんてん=難を転ずるにつながるとされ、厄除け、難逃れの意味を持ちます。

寒い冬にも枯れない緑の葉と赤い実をつけるところから縁起のよさ、吉祥の意味も持ちます。冬やお正月にぴったりの柄です。

幾何学模様

青海波(せいがいは)

無限に広がる波のさまを図案化したものです。

鱗のようにも見えますが、波を描いています。小さな半円にさらに半円を重ねて描かれる同じ間隔で繰り返される波の図案は、悠久、未来永劫、不変などの意味を持ちます。

亀甲(きっこう)

亀の甲羅を図案化したもので、六角形をつなげた形です。

六角形の内側に小さな六角形を描いた子持ち亀甲や、六角形のなかに三つの菱を連続してつなげた毘沙門亀甲もあります。いずれも、亀の柄と同様に、長寿・不老の願いが込められています。

麻の葉(あさのは)

麻の葉を図案化したものです。

麻に成長がとても早く、丈夫な植物です。そのすくすくと育つさまにあやかって、成長祈願、健康祈願を、また三角形をつなげた図案のかたちから、魔除け、厄除けの意味も持ちます。

七宝(しっぽう)

四方に伸び繰り返す図案から調和、円満、子孫繁栄の意味があります。

円を四分の一ずつ重ねて描かれる図案ながら、仏教用語の七つの宝を示す七宝と呼ばれるのはなぜなのかは諸説あります。

鱗(うろこ)

三角形をつなげ鱗を表した文様です。

鱗は身を守る、身を固めること、さらに三角形に厄除け・魔除けの意味があるので、強力な魔除け・厄除け・邪気祓いの意味を持ちます。

着物にはあまり描かれず、襦袢地や帯の意匠として使われることの多い柄です。

雪輪(ゆきわ)

雪の多い年は、豊かな水をたくわえることになり、その秋には豊作になるという伝えから、豊穣、豊作、瑞祥の意味を持ちます。

雪の結晶を丸くあがいたという説と、積もった雪のかたちを描いたという説があります。

柄の意味を知るとワンランク上の着こなしができる!

お祝い事のおよばれや、観劇やコンサート、お食事会など…季節・場・テーマに沿って着物や帯の柄を選ぶのはとても楽しいものです。

着物や帯の格の格だけでなく、さらに柄でもTPOと季節に合わせたーディネートをするのは、着物を着る醍醐味の一つです。

おめでたい席には吉祥文様

結婚式のお招きには、お祝いの気持ちと意味を込めた装いをしたいものですね。

それは格式の高い式場であっても、カジュアルなレストランウエディングであっても変わりません。

格式の高い式場でしたら、子孫繁栄や夫婦円満の意味を持つ貝桶や鴛鴦、扇面、松竹梅や束ね熨斗柄の訪問着や振袖に、七宝や亀甲、松などの袋帯をおすすめします。

カジュアルウエディングでしたら、橘や薬玉など古典柄の小紋や付け下げに、扇や松、宝尽くしなどの帯をおすすめします。

季節に合わせた花の模様

着物の楽しみの一つとして、季節の柄を取り入れることがあります。

冬に梅や椿、春に木蓮や桜といったぐあいです。

どの季節にも共通していえるのは、着物の柄は、季節を少し先取りすることです。桜柄なら、桜が開花し始めたころに、桜が満開の頃は、桜の花びら柄を。

桜の季節に真っ向から同じにするのは野暮の極みといわれています。特にお花見の時は、主役の花に一歩遠慮して柄を身につけるのが、粋な着こなしです。

また、着物の柄は、現代では写実的なものはその季節に、図案化されたものは通年OKとされています。

まとめ

日本古来の着物の柄(文様)には、先人の願いや祈りが込められています。

柄の多くは瑞祥と縁起物です。柄でお祝いの意を表したり身を守ったりできるのも、着物のすてきなところです。

意味をわかったうえで着物を着ているときは、知らないときよりも、きっと少しだけ気分があがりますよ。

それぞれの柄の楽しみ方を、ぜひ見つけてくださいね。