着物基礎知識

小紋とは?格と着用シーン、コーディネートを徹底解説

小紋は、お稽古事や街着、ドレスアップすれば少し華やかな席にも様々なシーンで着用できる着物です。

カジュアルなイメージが強い小紋ですが、フォーマルシーンにも着用できる小紋があることをご存じでしょうか?

そこで、今回は意外と奥の深い小紋について特徴や歴史などの基礎的な部分から、TPO別のコーディネート例まで詳しく解説していきます。


小紋とは?

小紋は、着物全体にパターン化された模様が入っている着物です。

全て同じ方向に向かって染められるため、模様に上下がある場合は、着物として仕立てた時には、模様が上向きになる部分と下向きになる部分があります。

大部分の小紋は、縮緬(ちりめん)などの白生地に型染め(かたぞめ)という技法で柄が染められます。型染めとは、染料一色につき一枚の型紙を使って生地を染めていく技法です。

手描きで模様を表現する手描き友禅とは違い、型紙を使うと同じ柄を何回も染めることができます。手描き友禅よりも手間がかからない分、価格もリーズナブルです。

小紋の種類

小紋には、様々な種類がありますが、ここではその中でも特に代表的な小紋を紹介します。

江戸小紋

江戸小紋は、着物全体に非常に細かい柄が染められた一色染めの着物です。

柄が細かいため、遠くで見ると無地の着物に見えるのが特徴です。

柄の種類は数千にものぼると言われていますが、柄が細かい程高度な技術が必要になり、その分価格も高くなります。

江戸小紋は柄によって、定め小紋(さだめもん)といわれ小紋に分かれます。

江戸時代、各藩の武士たちが江戸に集まる際、他藩と区別するために藩ごとに独自の柄を決め、裃(かみしも)に染めたのが定め小紋です。

その柄の中でも鮫(さめ)・行儀(ぎょうぎ)・角通し(かくどおし)が最も格が高いとされ「江戸小紋三役」と呼ばれています。

大小あられ・万筋(まんすじ)も次いで格が高く、この五つを合わせて「江戸小紋五役」と呼びます。

この五役の江戸小紋は、紋を入れると略礼服として着用できます。

種類
仙台藩伊達家 細かい点で斜めに重ねた扇型で鮫の肌に見立てている模様
角通し 信濃戸田家 極小の正方形が並んだ縦横に並べた模様
行儀 紀州徳川藩 点が斜め45度に規則正しく並んでいる模様
大小あられ 薩摩島津藩 大小の点が細かくちりばめられている模様
万筋 加賀藩前田家 細かい縦縞模様。

一方でいわれ小紋とは、定め小紋以外の小紋の柄の事で、江戸の町人が裃の小紋柄を模して植物や動物、生活用品など様々なものをモチーフに染めたものです。

一つ一つの模様には、縁起の良さや、めでたさ、願いが込められています。中には「三味線」や「大根におろし金」など、ユニークな柄もあります。

デザイン色の強いいわれ小紋は、江戸小紋の中でもカジュアルで略礼服には不向きです。

京型小紋(方友禅)


京型小紋は、京都で作られる何枚もの型紙を使って染められる多色染めの小紋です。

色一色につき一枚の型紙を使用し、型紙は図案の色数と同じだけ必要になります。多彩な柄付の場合には一枚の着物に対し100枚もの型紙を使用することもあります。

京友禅の華やかな柄を量産するために、明治初期にこの技法が生まれました。

京友禅と同じ雰囲気があり、一つ一つの柄大きく、色使いも多彩です。

また、図案化された抽象的な柄より写実的な柄が多く見た目も華やかなのも特徴の一つです。

加賀小紋

石川県の金沢市で作られている小紋で、加賀の大名前田家の裃の模様が発展したものと言われています。

加賀小紋は、江戸小紋と同様の方法で染められる一色染めのものと、京型小紋と同じ手法で型紙を使って染められる小紋があります。

どちらにも共通しているのが、加賀五彩(かがごさい)を使う事です。

加賀五彩とは加賀友禅に使われる、藍色・古代紫・草色・黄土色・臙脂(えんじ)色の5色の色のことで、この5色を使って染められた着物は、優しい印象に仕上がります。

特に一色染めで染めれられる加賀小紋は、江戸小紋のはっきりした色合いよりも、より柔らかい印象で、草木や花柄などの図案がさらに優しさを引き立てています。

小紋の格


着物はその種類によって第一礼装から普段着までの4つのグループに分類されます。

小紋は柄のタイプにより、準礼装、外出着に分かれます。

紋付の江戸小紋と加賀小紋は準礼装

柄が細かく、遠目で見ると色無地のように見える江戸小紋や加賀小紋は紋を入れると色無地と同格の準礼装としても着用できます。

準礼装として紋を入れる場合には、柄の細かいものを選びます。江戸小紋の場合であれば、格の高い江戸小紋三役や五役の柄を選ぶと間違いありません。

ただし、柄の細かい江戸小紋や加賀小紋は色無地と同格とはいえ、やはり小紋です。

結婚式などのフォーマルな場に着て行く際には少し注意しましょう。

自分自身は格式にのっとって着ているつもりでも「小紋は本来フォーマル向きではない」と、誤解を受けてしまう場合があるからです。

よりフォーマル色の強い結婚式や授賞式などに招かれた場合には、誰が見てもおかしくない色留袖や訪問着、付け下げなどがおすすめです。

紋無しの江戸小紋や加賀小紋、あるいは洒落感覚が強い図案は準礼装には不向きです。あくまでも外出着としてカジュアルシーンで着用しましょう。

その他の小紋は外出着

紋付の江戸小紋、加賀小紋以外の小紋は、洋服でいうとTシャツにGパンという感覚です。

あくまでもおしゃれ着としてカジュアルシーンで楽しみましょう。

京友禅の手描きの小紋などは、手間がかかっている分価格も高めですが、フォーマルシーンには不向きです。

袋帯を合わせて少し品格を上げて美術館へ、ショッピングには名古屋帯を合わせてカジュアルにと、その場の雰囲気に合わせて帯で格を調整するのがおすすめです。

小紋の歴史

小紋の原型が生まれたのは平安時代までさかのぼります。

武士の裃の柄として染めれられる行儀や通しなどの模様の原型が、平重盛によって厳島神社に奉納された鎧に用いられています。

小紋が着物の柄として用いられるようになったのは室町時代です。

江戸時代になると各藩独自の定め小紋が武士の裃に用いられるようになり、江戸中期以降には、ユニークな図案の小紋が庶民の間に浸透していきました。

さらに明治になり、海外から化学染料が日本に入ってくると染色技術も大きく変化します。

それまで単色染めしかできなかった型染でしたが、多色染めの技術が開発され、多彩な色使いの小紋が作られるようになり、現在に至っています。

TPO別おすすめコーディネート


ここからは小紋をTPOに合わせて上手に着こなすためのコーディネート例を紹介します。

結婚式

柄の細かい江戸小紋、加賀小紋に紋を入れたものは、略礼服として結婚式などに着用することができます。

しかし、先ほどの小紋の格の部分でも触れた通り、あくまでも小紋です。

幅広い年代層、特に年齢層が高めのフォーマル色の強い結婚式の場合には「結婚式に小紋を着ている」と思われる可能性もあることをしっかりと頭の中に入れておくことが大切です。

かしこまったフォーマルな結婚式には訪問着や紋付の色無地を着用し、レストランウエディングといったカジュアル色の強い結婚式には紋付の江戸小紋を着るなど、その場の雰囲気に合わせて使い分けましょう。

レストランウエディングなどの場合には、金や銀の袋帯は少し大げさすぎます。

したがって、重くなり過ぎずかつ落ち着いた袋帯を合わせ、衿元は刺繍入りの豪華な半衿を、バッグや草履などをおしゃれっぽくしてドレスアップしましょう。

お茶会

お茶会の席にも小紋が重宝します。

格の高いお茶会や気軽なお茶会の場合など、お茶会の雰囲気によって少し装いのポイントが違ってきます。

格の高いお茶席

少し格の高いお茶会の席には、江戸小紋を合わせましょう。

柄は鮫や行儀など格式のある柄がおすすめですが、春には小桜、秋は吹き寄せなど季節感のある模様を季節に合わせて選び着用するのもおしゃれです。

帯は、織りの袋帯や名古屋帯を合わせましょう。

公家の装束や調度品に用いられた有識文様やおめでたい予兆を表す、吉祥模様の帯は控え目な雰囲気の江戸小紋に上品な色どりを添えてくれます。

帯締めや帯揚げには、着物の柄の一色に濃淡を付けたものを選び、さりげなくポイントにするのがおすすめです。

気軽なお茶会やお稽古

気軽なお茶会や、お稽古着には京型小紋のようなよりカジュアルなものを選びましょう。

しかし、注意したいのが小紋の色柄です。派手なイメージを好まないお茶会の席では、派手過ぎない色柄のものを選んで着用するとよいでしょう。

帯は、全体的に淡い色合いの織りの名古屋帯を選び、帯締めで着物全体にアクセントをつけます。またお稽古には半幅帯を合わせるのも手軽でおすすめです。

観劇やコンサート

観劇やコンサートに出かける際にはカジュアルなイメージの小紋がぴったりです。

京型小紋、加賀小紋などのほかに、絞りの着物や更紗、紅型など好みに応じて個性的なものを選んでもよいでしょう。

帯は染めの名古屋帯がおすすめですが、袋帯ならよりきちんと感が出ます。歌舞伎などの古典芸能の場合には、全体的に落ち着いた上品なイメージに仕上げると、場の雰囲気にしっくりと調和します。

バッグもカジュアルな小紋に合わせてかっちりし過ぎないものを選びます。

草履も普段履きのあまり底の厚くないものを選びましょう。

三部紐に帯締めでおしゃれを演出するのもおすすめです。

外出着としてモダンに

自分が主役のショッピングやおでかけのシーンでは、洋服感覚で思いっきり個性的な印象に仕上げてみてはどうでしょうか?

アンティークの着物にレトロな帯を合わせて、ブーツや、帽子、日傘などの洋風の小物でモダンな印象に仕上げるのもおすすめです。

外出着にはルールは一切ありません。ファッションの一部としてどんどん着物を取り入れて楽しんじゃいましょう。

昭和の初期に作られた着物はカラフルで、モダンな雰囲気に仕上がります。

草履もソールに柄が付いているものや鼻緒に可愛い花柄がプリントされているもの、足袋も白地だけではなくカラフルなものなど様々な和小物を合わせてみてください。

また、わざと丈を短く着付けてブーツやハイヒールなどを合わせればより個性的でおしゃれなイメージなります。

小紋に関するQ&A

小紋に関するよくある疑問をいくつか見ていきましょう。

小紋は自分で洗えるの?

洗えるかどうかは、素材によって異なります。

ポリエステルの着物の場合には、自宅でもお手入れが可能です。

呉服屋さんの店頭で「洗える着物」と表示されているのを見たことがある人もいると思いますが、それがポリエステルの着物です。

ポリエステルは縮緬などの絹と違い水に強く縮みにくいので自宅でおしゃれ着洗剤を使って手軽に洗う事ができます。

絹100%の正絹(しょうけん)の生地は、水を含むと縮みやすいので、自宅での洗濯はおすすめできません。

正絹の場合は着用後、日の当たらない風通しの良いところで2~3時間干し、着物の中の水分を飛ばします。

しまう際に汚れをチェックし、目立った汚れがある場合にはクリーニングに出しましょう。

豪華な総絞りの小紋でもフォーマルにはNG?

豪華なイメージで価格も高い総絞りの着物は、フォーマルな場にも着用したくなりますが、結論はNGです。

絞り染めは、染めない部分の布を一つ一つ糸で括った後に染色するため、大変手間暇がかかります。その中でも総絞りは特に手が込んだ着物です。

しかし、見た目や値段が必ずしも格と直結するわけではありません。

総絞りの小紋の場合はあくまでもおしゃれ着の範疇であり、かっちりした結婚式にはやはり不向きです。

レンタルできる?相場は?

小紋は着物の中でも格が低く、レンタルの相場も5,000~10,000円程度です。

ポリエステルの着物などは特に安価でレンタルすることができます。

しかし、ポリエステルの着物を何回もレンタルするという場合には、購入した方がお得かもしれません。

反対に、型染ではなく、手作業で染められる手描き友禅の小紋などをレンタルする場合は、レンタル料も高くなります。

自分の着用スタイルに合わせて、レンタルか購入かを使い分けましょう。

まとめ

小紋は、カジュアルな場でおしゃれ着として洋服感覚で自由に着る事ができる大変気軽な着物です。

基本的に小紋はフォーマルシーンには着用しないというルールだけ頭に入れて、日常の様々なシーンに取り入れて楽しみましょう。