白鷹紬とは？特徴や柄の種類、見分け方から買取相場まで総まとめ

紬は、産地ごとに織り味の異なるものが作られています。

有名なところでは大島紬や結城紬などがありますが、他にも大変手の込んだ伝統技法を踏襲している紬があることもご存じでしょうか。

「板締染め」と呼ばれる特殊な染色技法を用いて作られる白鷹紬は、山形県白鷹町で作られています。

今回は白鷹紬について、特徴や歴史から買取相場に至るまでくわしくまとめました。

また、稀少な伝統技法を大事に継承している白鷹紬の工房も紹介します。

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白鷹紬の特徴

まずは、白鷹紬の特徴を押さえましょう。

板締絣染めによる細かな絣文様

白鷹紬は板締染め、正式には板締絣染めと呼ばれる特殊な染め技法を用いて作られます。

この技法によって、他の紬にはまず見ることのできないほど細かい模様が生み出されるのです。

白鷹紬に代表される文様は亀甲絣、十字絣など小さい柄の絣文様です。他には例を見ない緻密な絣文様が白鷹紬の特徴だと言われています。

文様の緻密さは、板締染めと呼ばれる白鷹紬独特の染色技法があるからこそ出せるのです。

一年に100反織られるかどうか「幻の紬」

白鷹紬は、独特の染色技法を用いるため、糸を染色するだけでかなりの時間を有します。

染色がしっかりなされた糸を用いた織込みにも時間がかかります。

例えば白鷹お召の場合、2000回以上の撚りが掛けられた強撚糸を交互に織り込み、さらに柄合わせもしていきます。

模様を付けた染色糸の柄合わせが難しく、1日20cmから30cmほどしか織り進められないそうです。

そのため、一つの反物が織り上がるのに数日を要することになり、結果一年に100反も出回らないのです。

白鷹紬を知っている人であれば、当然白鷹紬の稀少性も熟知しています。

着物通であれば、お金があればぜひにも一つ欲しい着物なのです。

置賜紬・米沢紬・米琉と呼ばれることも

白鷹紬が生産される白鷹町は山形県の置賜地方に属しています。

置賜地方とは米沢市・長井市・白鷹町周辺を指し、この地域で生産される絹織物は古くから置賜紬（おいたまつむぎ）と総称して呼ばれてきました。

今でこそ各市町村の名前を冠した米沢紬、長井紬、白鷹紬の名でそれぞれの紬が有名になりましたが、総称の置賜紬の名で呼ばれることも多いです。

ちなみに、江戸時代の置賜地方一帯は米沢藩が力を持っていたので、当時は置賜紬のことを米沢紬（よねざわつむぎ）と呼んでいました。

また、置賜紬の絣文様は琉球紬特有の文様にも似ているので、米沢琉球紬、略して米琉（よねりゅう）と呼ばれたこともあります。

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板締絣染め技法

白鷹紬と言えば板締染めと言われるほど有名な染色技法ですが、大変難しい作業が多いことから継承する人も少なくなっています。

どれほど難しい作業なのか見ていきましょう。

板締染め技法の工程

工程の流れは下記の通りです。

1. 絣板に糸を均一に巻きつける
2. 糸を巻きつけた絣板を30枚から50枚ほど重ねる
3. 重ねた絣板を押木とボルトで固定する
4. 固定された絣板の上から直接染料をかける
5. 染料は1時間以上を費やし、何度も掛け直される
6. 糸に十分染料がしみ込んだところで板締染めは完了する

②の工程では、板で挟み込んだ糸一本一本の張りが均一にならないといけません。

少しでも緩んだり、逆に張り過ぎてしまったりすると思っていたような文様も得られなくなってしまうのです。

しかし、糸がきちんと張られているか否かがはっきりするのは染色の全工程が終了した後でないと分からないので、熟練の技が必要なのです。

④⑤の染色工程では、「ぶっかけ染め」と呼ばれる方法で、1時間以上を費やして何度も何度も染料を掛け足していきます。

ぶっかけ染めが終了し、いよいよ絣板から糸を解く段階になって初めてこの回の板締染めが成功したか分かるのです。

白地になるはずのところに色が入ってしまったり、きちんとした文様になるべきところが白抜きになってしまったりしていた場合は、糸をボツにせざるを得ません。

かなりの集中力と経験が求められる染色方法といえます。

板締染め技法の難点

板締染め技法の難しいところは大きく２つあります。

糸の張り具合、柄合わせの難しさ

ひとつめは、板締染め技法の難しさは糸を均一に張らなくてはいけない点です。

同時に、模様の配置を考えながら板を選び重ねていかなくてはいけないという作業もあります。

糸の張りだけに気を取られ、間違った順番や組み合わせの絣板を用いたならば、どんなに糸がきちんと張れていても失敗作になってしまうのです。

このように、作業そのものにも難点が多々ありますが、板締染め技法には他の難点もあります。

板締染め技法に用いる道具管理の難しさ

板締染め技法を継承させにくくしている原因とも言えるのは、作業そのものではないと言います。

板締染め技法のもう一つの難点は、絣板の管理です。

絣板は全てブナなど天然木を用いて作られているため、過度の乾燥によって歪みが生じてしまうのです。

最悪の場合は割れが生じることもありますが、歪みが生じた絣板は他の絣板と文様が合致しなくなるため、使い物にはなりません。

作業そのものが大変なのに板の管理まで徹底できないと、板締染め技法を手放した工房は10を超えます。

今現在、白鷹町内でも2つの工房しか板締染め技法を継承していません。

廃れつつある技法

現代の紬生産は、伝統技法も大切だが効率性も大切と、機械織りが導入されるなど進化し続けています。

他産地が量産の道を模索しているのに対し、白鷹紬の製造方法は真逆の道を辿っていると言わざるを得ません。

伝統的でかつ白鷹紬の最大の特徴と言える板締染め技法ではありますが、難度の高さと絣板の管理問題から手を引く工房は後を絶ちませんでした。

現在は町内の2つの工房によって死守されていますが、そのうちの一つの工房では継承者問題が上がっており、板締染め技法の存続が危惧されています。

一時は絣板に模様を彫る板大工も継承する者がいないと話題になりました。

今白鷹町では、独自の板締染め技法が幻の技法にならないよう、なんとか継承していく道を模索しています。

江戸時代から続く白鷹紬の歴史

白鷹紬の歴史は江戸時代に始まります。

米沢藩が養蚕業を奨励したことがきっかけで、絹織物も盛んになりました。

明治後期になると、栃木県の方から技術者を招き入れます。栃木の技術者からもたらされたのが「板締め」による染色技法でした。

現在の板締染め技法は、明治期にもたらされた「板締め」による技法を踏襲しています。

白鷹紬は板締染め技法を得たことで、他の絣と一線を画すことに成功し、独自の白鷹紬を展開していきます。

白鷹紬の産地

白鷹紬は、山形県中部にある西置賜郡白鷹町で作られる紬です。

白鷹町で作られる織物は総称して「白鷹紬」と言われるため、白鷹御召も白鷹紬の名で呼ばれることがあります。

白鷹町は山間の集落で、人口は約15000人規模の町です。

最上川流域に位置する白鷹町は、養蚕業にも最適な豊かな自然を有しています。

水も緑も豊かなこの地で養蚕業が盛んになったのも頷けます。

白鷹紬の伝統技法「板締め」を継承する工房

 

白鷹紬の伝統的な染色技法である板締染め技法を継承している工房は白鷹町にももう2軒しかありません。

ここでは、その貴重な工房をご紹介します。

小松織物工房

小松織物工房は、白鷹町に板締染め技法が入ってきた時から糸の染め屋として開業し、今に至ります。

元々は糸染めが専門でやっていましたが、今は白鷹紬を製造する全工程を担っています。

父・小松寛幸さんと息子・小松紀夫さんが現在工房を運営しており、廃れつつある染色技法を必死に守っているのです。

小松織物工房の主力商品は「白たかお召」と呼ばれるもので、紬よりもワンランク上の絹織物になります。

板締染めで染め上げた絣模様と鬼シボが特徴的で、さらりと着心地が人気の一品です。

白たか織工房

白鷹紬の作家として有名な佐藤新一氏が率いる工房です。

昔から伝わる草木染、板締染め技法を用いた染色、昔ながらの高機での織りを実践しています。

白鷹紬以外にも、白たかお召や白鷹手綾織なども手掛け、白鷹紬を世に発信し続けています。

現在織子は一人しかおらず、年間に作り出す反物数も減っていると言います。

継承者問題に悩まされることも多いですが、伝統技法を守るべく、日々精進しているのです。

白鷹紬の着用シーン

白鷹紬は、独特の染色技法を用い、時間をたっぷりかけて作り上げられる着物ですが、派手さはありません。

そのため、ちょっとしたよそゆき着に最適な着物です。

紬は元々普段着用に作られた着物なので、フォーマルな場には相応しくないので注意しましょう。

着用シーン①　料亭での親族食事会

料亭など、ちょっと高級な日本料理店で親族の食事会があるという時にどんな着物を着たら良いか迷う方もいるでしょう。

フォーマル過ぎても、カジュアル過ぎてもひんしゅくを買ってしまいかねません。

フォーマル過ぎず、カジュアル過ぎない着物を選ぶのであれば紬が良いでしょう。

白鷹紬は、紬の中でも特に落ち着きと上品さを兼ね揃えた着物なので、料亭向きの着物だと言えます。

色味も落ち着いたものが多いので、食事の席でも悪目立ちする心配もありません。

落ち着いた色物で、季節感のある帯を合わせると風情が出て良いでしょう。

着用シーン②　旅行先にも

最近では旅行先で着物を着るという人も増えてきました。

京都など、歴史のある街並みに着物はよく映えます。

しかし、観光をする際に上等な訪問着ではどこか場違いな雰囲気を出してしまいかねません。

ワンピース感覚で小紋を着るという選択肢もありますが、紬を纏ってワンランク上の着物と名所の楽しみ方をするというのはいかがでしょうか。

品があり、落ち着きもあるものの、フォーマル過ぎない紬はどんな場にも相応しいです。

観光場所によっては、「もう少し良い恰好でくればよかったかも」と思える場所もあります。

白鷹紬であれば、少し格調高い場でも場の雰囲気を壊すようなことはありません。

絹素材で、軽やかな着心地でもあるので、沢山歩き回る予定の旅行にも最適です。帯を何本か用意すれば、その日の気分で着まわすことも可能です。

着物を持っていく旅は、大荷物になると思ってしまいますよね。

しかし、着物一着に対して帯を三本用意することで三日間のコーディネートが完成します。

旅行に行く道中も着物で移動するならば、持ち物は帯及び小物だけで、実は洋装よりも荷物がコンパクトになるのです。

紬は訪問着などと比べても汚れに強いので、旅行に着物を持っていくのであれば紬を強くおすすめします。

白鷹紬の見分け方。証紙やマークを確認！

紬の見分ける上で、やはり証紙の存在は大きいです。

白鷹紬の証紙はどんなものなのか、見ていきましょう。

証紙を見分ける

画像引用元：ヤマガタ情報サイト

白鷹紬には、製造元の工房ごとの証紙が貼られており、「白鷹紬」もしくは「白鷹お召」の文字と共に確認することができます。

例えば小松織物工房による白鷹紬の場合、「小松織物工房」という名が入った証紙を確認することができます（上写真）。

大きな文字で「白たかお召」という文字が織り込まれているので、一目で白鷹紬であることも分かります。

ものによっては白い鷹が描かれたマークが付けられているものもあります（上写真）。

手文字で「白たか織」と書かれたマークが確認できるものもあるので、紬が白鷹のものかどうかはすぐに判断できます。

伝統的工芸品のマーク

画像引用元：伝統的工芸品産業振興協会

白鷹紬は伝統的工芸品に指定はされていますが、置賜紬の一つとして指定されています。

置賜紬は、1976年に経済産業大臣指定の伝統的工芸品に指定され、2007年に山形県の無形文化財に指定されました。

つまり、置賜紬の一つに数えられる白鷹紬も同様に伝統的工芸品及び無形文化財に指定されたのです。

白鷹紬、つまり白鷹板締小絣の指定条件は以下の通りです。

• 先染めの平織とすること
• 経糸及び緯糸に使用する糸は「水より」をすること
• 地糸に使用する糸は「追ねん」をすること
• 絣糸は経糸及び緯糸に使用すること
• 経糸の絣と緯糸の絣とを手作業により柄合わせし、絣模様を織り出すこと
• 絣糸の染色法は「板締め」によること
• しぼ出しは「湯もみ」によること

条件を一つでも満たさない白鷹紬は伝統的工芸品とは見なされず、伝統的工芸品マークは付けられません。

白鷹紬の買取価格と口コミ

幻の紬と言われる白鷹紬は、新品で購入するとなると安くても60万、高いもので100万を超えます。

では、買取額はどれぐらいになるのか見ていきましょう。

買取価格

白鷹紬の買取価格は、大体2万円前後が相場となっています。

白鷹紬（証紙付）	数千円～50,000円
白鷹紬（証紙なし）	数百円～4,000円
白鷹紬（証紙付、未使用）	数千円～200,000円

白鷹紬を証明する証紙が失われている場合は、価格もぐんと下がり5000円未満の値段しかつきません。

少しでも高値で買取してもらいたいのであれば、証紙は全部揃えておきましょう。

また、白鷹紬の未使用品はかなりの高額で買取してもらえるようです。

買取前に、着物のシワ、汚れの確認をし、綺麗な状態にしておきましょう。

【注意】保存状態や種類によって価格は変動する

実際の買取価格は、保存状態・作家・産地などによって変動します。保存状態の良い白鷹紬には100,000円ほどの価格が付くこともあれば、汚れの目立つ古いものにはほとんど値が付かないことも。

お手元の白鷹紬が実際にいくらになるのかは査定に出してみないとわかりません。まずは無料査定に出してみることをおすすめします。

実際に買取を行った人の口コミ

白鷹紬の買取を実際に行った人の口コミを見ていきましょう。

実際に買取を行った人は、予想以上の値段で買取ってもらえたという人が多かったようです。

やはり、市場に出回っている数が少なく、珍しいというところに付加価値が見出されているようです。

白鷹紬の独特な染色技法も廃れつつあることを鑑みると、今後白鷹紬の買取価格は上昇するかもしれません。

いずれにしても、状態の良さ、証紙も有無は買取価格に影響を及ぼすので、買取前に着物の状態確認は忘れずに行いましょう。

まとめ

幻の紬と言われる白鷹紬ですが、このまま伝統的な染色法を継承する人がいなくなってしまうと本当に「幻の着物」になってしまいかねません。

独特な技法ですが、日本の素晴らしい技術として後世にも残していきたいものです。

白鷹紬は稀少性の高さから新品価格はもちろん、買取価格も比較的高額になっています。

高級紬として名を馳せている大島紬や結城紬よりも買取価格が高くなることも多く、驚かれる人も少なくありません。

白鷹紬の買取をお願いしようかと迷われている方は、まず無料査定に出してはいかがでしょうか。

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