着物の収納には桐タンスや桐箱がいちばん。
ですが、他のものでも収納OKなのです。住宅事情や手持ちの着物の枚数によって、それぞれに合う収納グッズや収納方法があります。
洋服用のタンスやプラスチックなど、収納グッズごとの注意点も交えてさまざまな収納方法を紹介します。
着物に一番良いのは桐タンス
着物・帯の収納には、桐タンスが一番とされてきました。
桐が着物を守ってくれる
桐が湿気を吸ったり放出したりする特性を持っていることから、桐タンスは呼吸するといわれています。
そのため、乾燥する冬場もジメジメする梅雨の季節も、桐タンスの中はほぼ一定の湿度に保たれています。
湿気は、天然染料で染められた着物の変色原因にもなりますし、正絹素材のカビの原因にもなります。このようなトラブルから大切な着物を守ってくれるのが、桐素材なのです。
湿度のコントロール以外にも、防虫効果がある、軽くて丈夫、変形しにくい・割れにくい、腐りにくい、燃えにくいなどのメリットがあります。
桐は、着物に限らず、ひな人形や兜、草履など大切なものを長期にわたって保管するのに最適な素材なのです。
桐タンスの注意点
着物の保管に最適な桐タンスにも注意すべき点がいくつかあります。
水ぶき厳禁
桐は湿気に強い素材とはいえ、水分は良くありません。
乾いたタオルや手ぬぐいで木目に沿って優しく拭きましょう。マイクロファイバーなどの化学繊維も避けましょう。
設置場所
設置場所は、直射日光・冷暖房が当たらない場所に水平に、壁から数cm離して置きましょう。
特に梅雨時の窓際や冬の結露した窓ガラスの近くは避けてください。桐タンスの劣化を軽減できます。
開け閉めはゆっくりと
引き出しを開けるときは水平にゆっくり引き出しましょう。
力任せに引き出すと傷みの原因になったり、引き出しが勢いよく外れて怪我につながったり、金具の取っ手部分が外れたりしてしまうこともあります。
色んなタイプの桐ダンスがある
昔ながらの桐タンスは、上段は扉が付いて、中段は無垢の引き出し、下段は金具の取っ手付きの引き出しというタイプが主流でした。最上部は引き戸があり、一見わからないように中の細工棚にへそくりスペースもついているといった婚礼家具タイプのものも。
現代では、嫁入り道具に桐のタンスを購入することは少なくなりました。
その代わり、クローゼットや押し入れに入れて使うのに便利なキャスター付きの引き出しタイプや、着物・帯・襦袢が1枚ずつはいる箱タイプなど、昨今の住宅事情に合わせた桐の商品がいろいろと作られています。
今あるもので済ませたいなら洋服タンスでもOK
わざわざ購入するのは気が引ける場合は、今あるタンスでも代用できます。
着物収納に向いている洋服タンス
引き出しタイプの洋服ダンスがあるなら、わざわざ桐ダンスを購入しなくても大丈夫。
内寸の奥行きが40㎝以上、幅が90cm以上の引き出しであれば、本たたみで二つ折りにした着物をたとう紙ごと収納できます。
外側がウレタン塗装の檜やパイン材などでも、内部が桐製のものなら、着物をたとう紙や風呂敷に包んで防虫剤と一緒にしまっておけます。
ただしお手入れは念入りに
桐タンスよりも念入りにお手入れしましょう。
内部が杉材やパイン材なら、桐タンスへ収納する場合よりもこまめに引き出しを開けて、空気の入れ替えをすれば大丈夫です。虫干しもこまめに行えば、着物のカビも防ぐことができます。
引き出しごとに防虫剤と除湿剤をいれておきましょう。入れっ放し、しまいっ放しは危険です。こまめに引き出しを開けて空気の入れ替えをしましょう。
空きスペースを活用したいならケース類
おすすめは布ケース
不織布に中芯をいれて作られた10cm ほど深さのあるタイプと、袋状のタイプがあります。どちらも通気性があり、安価で購入できます。
深さのあるタイプは、中芯が入っているので重ねて使うこともできます。取っ手付きのものがほとんどなので、タンスの上や高い場所に収納するときにも便利です。
着物なら3枚程度、単衣や浴衣なら5~6枚収納できます。
袋状のタイプは、たとう紙にいれた着物を2枚分ほど収納できます。長さのある長尺タイプが主流です。
不織布は通気性がありますが、吸湿性もあるので床への直置きは避けましょう。
プラスチックケースも可
押し入れに入る寸法の引き出しタイプは帯の収納にぴったりの大きさです。また、着物も三つ折りで入れられます。
キャスター付きの蓋つきタイプは、内底にキャスター部分のへこみやでっぱりがあったりするので、寸法だけでなく作りもよくみて使いましょう。
通気性は全くないといえるので、すのこを敷いて利用するのも良いでしょう。こまめに空気の入れ替えをし、プラスチックケースにも使える防虫剤、除湿剤を併用しましょう。
重ねて入れてある帯や着物の上下を入れ替えるのも、通気させる方法の一つです。
段ボールケース
安価で手ごろな段ボールケースは、草履や小物、帯くらいまでで留めておきましょう。
パルプ素材は吸湿しますが、湿気を放出する機能がないので、一定の湿度を越えるとなかの着物に湿気が移ります。変色やカビの原因になってしまいます。
- 短い期間の保管にする
- ケースごと空気にさらして湿気逃がしをする
- 除湿剤をたくさん使う
- 正絹の着物以外の収納に使う
このような工夫や対策をして利用するのがおすすめです。
機能性フィルムケース「きものキーパー」
きものキーパーとは、着物の収納の常識を覆す「虫干しいらず」「防虫剤いらず」の素材です。
まあまあのお値段ですが、桐箱ほどではありません。
酸素・紫外線・ガスを遮断し、水分もほぼ通しません。酸素と水分を通さないので、カビの繁殖を防ぎ、虫害からも着物を守ってくれます。
ベッドの下や床に直置きなど、着物に不向きな場所で保管しても大丈夫です。
防虫剤・除湿剤は不要です。むしろ、入れてはいけません。
仕舞いっぱなしはNG!着物のお手入れも忘れずに。
きれいにたたんでシワ予防
着物は本だたみにして、できれば二つ折りにし、スペースがなければ三つ折りにしてたとう紙に入れます。
たとう紙は和紙製のものにしましょう。安価なパルプ製もありますが、吸湿してしまうので、着物に湿気が移り、変色やカビの原因になります。
たとう紙のほかにおすすめは鬱金(うこん)の風呂敷です。
二四巾と呼ばれる90cm四方の風呂敷は、三つ折りにした着物や、夜着だたみにした着物を包むのにちょうどいい大きさです。
除湿剤・防湿材や防虫剤は必須
桐タンス・普通のタンス・ケース類、いずれを使うにしても、除湿剤や防虫剤は必須です。
絹には虫はつかないのですが、絹についた汚れには虫がつくので、結果として絹も汚れとともに虫に食われることがあります。
着物に特化した、防虫・防カビ・防湿が一緒になっている優れものや、天日に干して繰り返し使える経済的なものもあります。
防虫剤は、香りのないピレスロイド系、ピレスロイド系の薬剤に優しい香りをつけたもの、殺虫成分としても使われるほどの強い効果があるナフタリン系やパラジクロルベンゼン系、植物由来の樟脳など、いろいろな種類があります。
いずれをつかうにせよ、収納の材質と着物に使っても大丈夫なものを選びましょう。一度に使う防虫剤の種類は必ず1種類で。2種類以上の防虫剤を使ったときに、思わぬ化学反応で着物や収納を傷めないようにするためです。
除湿材・防虫剤とも、自分にとって使い勝手のよい、好みのものを使いましょう。
虫干しをしよう
着物の虫干しというのは簡単に言うと、着物や帯をタンスから出して風に当てるメンテナンスのことです。
梅雨明け後の晴れた日や、秋の晴れて風の吹く日、春の晴れた日などに行います。つまり「降雨・降雪シーズンのあとの、乾いた風が吹く好天の日」に行うのがポイントです。
着物を収納から出し、着物ハンガーにかけて風を通します。洋服用のハンガーでもかまいません。
着物に風通しをしている間に、古くなったり変色したたとう紙を新しいものに取り換えましょう。
防虫剤、防湿材もとりかえます。繰り返し使えるものは天日に干し、収納の内側もメンテナンスします。
虫が入り込んでいないか・ほこりが入り込んでいないか確認し、何もなければ乾いた布で拭くだけでOKです。なにか入り込んでいた場合は、掃除機できれいになるまで吸いだしてから、乾いた布で拭きましょう。
1~2時間ほど風通しをしたら、着物にしわがないようにたたんでしまいます。
まとめ
着物というと、なにかと専用の特別なもの、高額なものが必要なのではと思いがちですが、工夫と手間次第で安価で、身近なものでも代用可能です。
今回はさまざまな着物の収納方法と注意点、メンテナンスについて紹介しました。
お手持ちの着物の枚数、お住まいやライフスタイルに合わせて、お好みの収納方法を見つけてくださいね。
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