着物を着る機会があると、その後のメンテナンスについても気になりますね。
着物のメンテナンスには、丸洗い・洗い張り・仕立て直しなど以外に、昔から行われてきた「虫干し」があります。
着物の虫干しはどうやるの?簡単な方法はある?という疑問から、そもそも虫干しって何?という基本的なところまで具体的に解説していきます。
虫干しは着物を守る必須メンテナンス
虫干しには、次のような効果があります。
- 着物の色が損なわれないようにする
- 汚れによる傷みが出ないようにする
着物を長く良い状態に保つために有効なメンテナンス作業なのです。
この効果的な虫干しは古くから行われており、中国の曝涼(ばくりょう)と呼ばれる年中行事でもありました。
書物や衣服、調度品などを箱から出し、風を通して湿気をとり除き、カビや虫を防ぎます。また、カビや虫、傷みのある場合は、修繕をします。この一連の作業が、曝涼であり虫干しなのです。
現代での日本でも、正倉院の宝物や各寺院の蔵物などの曝涼が行われています。この時期のみ拝観できるようにする寺院もあります。
虫干しの方法ー通常バージョンー
昔ながらの虫干しの方法は、しまっていた着物を出して風を通し、ほこりを払い、カビや虫を取り除き、必要に応じて修繕を行う、という流れになります。
ここでは、自宅でできる虫干しの方法をご紹介していきます。
いつするの?時期や天候、時間にも注意。
昔ながらの虫干しは、年3回、いずれも晴れが続いた日に行います。
- 梅雨明けの夏(7月下旬~8月上旬)
- 台風シーズン後の秋(10月下旬~11月上旬)
- 春雨前の冬(1月下旬~2月上旬)
良く晴れた、乾いた風の吹く日が虫干しに最適です。少なくとも2日続きの晴れた日を選びましょう。
雨の翌日や夕方から雨が降る日は、昼間の天気が晴れていても、空気に湿気を含んでいるので虫干しは避けます。
また、虫干しに適した時間帯は午前10時頃から午後3時頃です。
1日の湿度の移り変わりを見ると、夜から朝にかけては湿度が上がり、日中に向かって湿度が下がります。昔の人は科学的根拠などなしに、体感で虫干しに適した時間帯を決めていたのです。
何が必要なの?
必要なものは下記の通りです。虫干しする前にそろえておきましょう。
- 着物用ブラシ(なければタオル)
- 着物ハンガー(なければ洋服用ハンガー)
- 衣裳敷き(なければ風呂敷やシーツ)
- 新しいたとう紙
- 新しい防虫剤
より簡単に楽に虫干しするために、あると便利なものはこちら。
- ほこり取りワイパー
- ノズルタイプかハンディタイプのクリーナー
どうやるの?実際の手順
着物の虫干しといっても今では日常から離れてしまっているので、具体的にはイメージしにくいですよね。
そこで、初心者の方にも着物好きの方にもわかりやすいように、順を追って説明していきます。
Step1 部屋の空気を入れ替えて、タンスを開ける
タンスの中にも湿気がたまっています。
タンスを開けて着物を出したら、引き出しを開けたままにしておきましょう。
Step2 着物を出してハンガーにかける
着物を出すのは衣裳敷きの上で行いましょう。
着物にとって紫外線は、色焼けや変色の原因になるので、直射日光をさけてぶら下げます。
着物用ブラシでそっとほこりを祓いながら、汚れやカビがついていないかチェックしましょう。クリーニングなどの専門店に出す着物としまう着物を、エリア分けをてぶら下げておくと、あとの作業が楽にできます。
風を当てる時間は1~2時間で十分です。その間に、たとう紙のチェックやタンスのメンテナンスをします。
Step3 たとう紙をチェックする
たとう紙も、着物を湿気から守ってくれています。
変色しているもの、シミができているもの、虫のついているものは新しいものに取り替えます。傷みのないたとう紙はほこりを払い、陽に当てたり、空気にさらして乾燥させましょう。
Step4 タンスの中をチェックする
タンスの引き出しをすべて出して、本体も引き出しも風に当てます。
タンスの中にほこりが入っていないかチェックしましょう。
ほこりや繊維くずがあったら、ほこり用のワイパーやハンディクリーナー、ノズルタイプを使って取り除きます。
タンスや引き出しを拭くときは、乾いたタオルや布巾を使いましょう。タンスの外側であっても、濡れた布巾やタオルを使うのは厳禁です。
防虫剤を使っている場合は、残量や有効期間をチェックし、必要に応じて入れ替えや追加をしましょう。
Step5 着物をたたんでたとう紙に入れる
衣裳敷きに広げたたとう紙の上で、風通しの済んだ着物をたたみます。
着物をたたんでからたとう紙に入れるよりも簡単で手間が省けます。
手持ちの着物がたくさんある場合は、たとう紙の端に着物の種類や色柄を書いておくとあとあと便利です。Hや2Hなどの硬く色移りしない鉛筆を使うのがおすすめです。
Step6 着物をタンスにしまう
入っていた着物の順番をさし支えのない範囲でいれ替えます。
訪問着や留袖などの礼装着物は上段や、着物の重なりの上の方へしまいましょう。
小紋、紬などの普段着は同じ引き出しに。
今まで下になっていた着物を重なりの上の方へ、上に重ねていた着物は下の方へと入れ替えておきます。
虫干しの方法ー簡単バージョンー
「着物の虫干しをしたいけれど、そんな時間も場所もない…」
「簡単でいいから自分でやりたい。着物を大切にしたい」
という方のために、少し手を抜いた簡単バージョンをご案内します。
いつするの?年に一度でもOK。
年に3回もできないという方は年に1回でも構いません。その場合は、10月から11月上旬がおすすめです。
近年の温暖化で、昔ながらの土用の虫干しの時期(7月下旬~8月上旬)は気温が高くなることの多く、窓から入る風が熱風に感じられることもあります。
着物の温度が高温になったあとに冷えると、その時の形でアイロンをかけたようにしわがくっきりとついてしまいます。虫干しは基本的には窓を開けて行いますので、熱風が窓から入るのは着物にも人にもあまり良いことではありませんね。
したがって虫干しを年に1度だけするなら、10月から11月上旬がおすすめなのです。
お住まいの地方によって気温が違うので、涼しくなった秋口の晴れて風の吹く日を選んでください。この時期であれば、空気が乾燥し始めるので、着物の湿気を飛ばすにのにもちょうど良い季節です。
何が必要なの?
簡単バージョンの虫干しには、最低限のものがあればOK。
- 新しいたとう紙
- 新しい防虫剤や除湿剤
どうやるの?実際の手順
それでは虫干し簡単バージョンの手順を見ていきましょう。
Step1 タンスの引き出しをあける
窓をあけて部屋の空気をいれかえ、タンスの引き出しをすべて開けます。
タンスの引き出しは開けたままにして、タンス内の空気も入れ替えましょう。
Step2 着物をたとう紙に入れたままタンスから出す
着物を干さずにタンスから出すだけでもずいぶん違います。
着物の湿気もある程度は取り除け、すべての着物を出せばタンス内の湿気も十分に取り除けるでしょう。
Step3 たとう紙や防虫剤を入れ替える
たとう紙にシミや汚れ、変色や虫食いがあった場合は新しいものに取り替えましょう。
有効期限が切れた防虫剤や除湿剤も、新しいものに入れ替えます。
Step4 着物をタンスにしまう
たとう紙に入れた着物をタンスにしまいます。
どうしても面倒なら虫干し代行サービスもあり
時間がとれない、部屋のスペース的に難しいという場合は、着物を預かって虫干ししてくれる業者さんにお願いしちゃいましょう。
オゾン消臭機器を使ってのメンテナンスの業者さんもあります。着物のにおいも取ってもらえるので、古い着物の独特のにおいも薄くなります。
きもの医 | 1点500円~ |
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和服お手入れ処 絹友 | 1点4500円~ |
きものケアbyやまと | 1点2200円~ |
高級着物のお手入れ つるや本店 | 1点500円~ |
汚れやシミを見つけた時の対処法
着物を脱いだ時には気が付かなかった汚れやシミが、虫干しで見つかることがあります。
時間の経過とともに汚れが浮いてくるので、汚れのメンテナンスという意味でも虫干しするのは着物にとってとても良いことです。
着物専門クリーニング店へ
着物の汚れやシミは専門店に依頼するのが基本です。
ポリエステル100%の着物や長襦袢は自宅で洗濯可能ですが、正絹の着物は自宅での洗濯は厳禁です。色落ちや縮みなどが起きて、物によっては修復不可能になります。
着物専門のクリーニング店や昔ながらの悉皆屋さんは、着物についたシミや汚れに合ったケアをしてくれます。汚れの状態によって、染み抜きにするか、丸洗いにするか、両方にするかなどの判断を安心して任せられるでしょう。
最近では、宅配サービスで集荷・配送で着物を預かってクリーニングしてくれる業者も増えました。
わ蔵 | 1点7000円~ |
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きものお手入れ専門店 京な | 1点5000円~ |
きものtotonoe | 1点7200円~ |
皮脂汚れは自宅で処理もできる
長襦袢や着物の衿、袖口についた軽い皮脂汚れであれば、石油系溶剤のベンジンを使って自宅でもメンテナンスが可能です。ベンジンは薬局やドラッグストアで購入できます。
用意するもの
- ベンジン
- フェイスタオルやバスタオル 3~4枚
- ハンドタオル、ハンドタオルくらいの大きさの布 2~3枚
大まかな手順
着物の汚れ部分の下にフェイスタオルを敷き、ハンドタオルにベンジンをたっぷり吸わせて、汚れの上からたたきます。
このとき、絶対にこすらないこと。こすると着物の生地を傷めます。汚れを裏に貫通させるように使うのがコツです。
汚れが薄くなるまできれいなタオルに取り換えながら繰り返します。
ベンジンの輪染みができるので、ベンジンの外側をタオルでたたいてぼかします。
時間が経過した皮脂は自宅で落としきることは難しいので、専門店に任せましょう。
まとめ
虫干しは、日本の伝統文化である着物の有効なメンテナンスです。
梅雨や四季のある日本の気候風土にそった昔ながらの虫干しの作業は、手間がかかりますが、着物を大切に着たい、大切に保管したいからこその年間行事ともいえます。
大切な着物を気持ちよく着られるように、大切に保管できるように、簡単な方法や専門の業者さんを上手に利用して虫干しをしてみてくださいね。
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