茶道とは、抹茶を中心とした茶の湯の作法であり、精神性や美学が重視される文化です。最近では茶道の和敬清寂(わけいせいじゃく)という概念が注目され、お茶をたてる時間を精神性を高める時間に利用する人も増えています。ここでは茶道を始めるにあたって茶道具を揃えたい、実家に眠っている茶道具にはどのような用途があるのか知りたい方々を中心に茶道具の種類・用途についてご紹介していきます。
茶道具とは
茶道の実践や茶会で使用される様々な道具を総称しており、茶碗や茶筅、茶杓などが含まれます。これらの道具は、茶道の流派や季節、茶室の装飾によって異なる素材やデザインが用いられることがあります。茶道具は、お茶を点てるための用途だけでなく、茶道の美学や精神性を細部に至るまで表現する為に重要なものになります。
以下に茶道具を種類ごとにまとめました。
茶碗(ちゃわん)
抹茶を入れて飲むための陶磁器製の器。器としての役割はもちろん、茶碗には制作方法として様々な焼き方があり、見た目を楽しむという点でも大事な茶道具の一つです。
代表的な茶碗の種類
黒楽茶碗(くろがらちゃわん)
楽焼(らくやき)の一種で、黒っぽい色合いが特徴的。茶道の始祖・千利休が愛用していたとされる。
赤楽茶碗(あかがらちゃわん)
楽焼の一種で、赤褐色の色合いが特徴。黒楽茶碗と並んで利休が好んだとされる。
織部茶碗(おりべちゃわん)
織部焼(おりべやき)の一種で、緑色の釉薬と粘土の組み合わせが特徴。織部とは千利休の弟子・古田織部に由来する。
木地茶碗(きじちゃわん)
木製で、漆や蒔絵などで装飾された茶碗。冬場に温かみがあるとして好まれる。
瀬戸茶碗(せとちゃわん)
瀬戸焼(せとやき)の一種で、日本最古の陶磁器産地・瀬戸で生産される。多様な色彩とデザインがある。
京焼茶碗(きょうやきちゃわん)
京焼(きょうやき)の一種で、京都で生産される。繊細な絵付けや彩色が特徴。
備前茶碗(びぜんちゃわん)
備前焼(びぜんやき)の一種で、岡山県備前市が産地。素朴で力強い表情が特徴。
黄瀬戸茶碗(きせとちゃわん)
黄瀬戸焼(きせとやき)の一種で、黄色が特徴的。アイボリーやクリーム色の釉薬がかかったものもある。
茶筅(ちゃせん)
抹茶を泡立てるための竹製の道具。茶筅は竹で作られており、抹茶とお湯を均一に混ぜる役割を持っています。また、混ぜることできめ細やかな泡を作り出し、クリーミーなくちどけをプラスしてくれます。
竹の種類による分類
白竹(はくたけ)
光沢があり、高級感があるため、茶道で一般的に使用される。
黒竹(くろたけ)
真っ黒な色合いが特徴で、白竹に比べて重厚感がある。
煤竹(すすたけ)
表面に煤が付いているような色合いで、白竹や黒竹とは異なる風合いがある。
形状による分類
鹿の子筅(かのこせん)
典型的な茶筅で、繊維が均等に割られ、円錐形状をしている。
手繰り筅(たぐりせん)
繊維が手繰り糸のように巻き付けられている。
雁木筅(がんぎせん)
鹿の子筅と手繰り筅の特徴を組み合わせたもので、繊維が雁木状に配置されている。
繊維の本数による分類
百本立(ひゃくほんだて)
繊維が約100本ある茶筅。
百二十本立(ひゃくにじゅっぽんだて)
繊維が約120本ある茶筅。
百八十本立(ひゃくはちじゅっぽんだて)
繊維が約180本ある茶筅。
茶杓(ちゃしゃく)
抹茶を茶碗にすくうための竹製のスプーン。茶杓を使って抹茶を茶碗に移す際、手首や指の動きによって茶道の作法が表現されます。これにより茶道の美学や精神性を示す重要な要素となっています。
茶入(ちゃいれ)
素材による分類
陶磁器製茶入れ
美濃焼(みのやき)、瀬戸焼(せとやき)、九谷焼(くたにやき)などの陶磁器で作られた茶入れ。色や形状、デザインが豊富です。
木製茶入れ
様々な木材を使用した茶入れで、温かみのある風合いが特徴。代表的なものに、檜(ひのき)、桐(きり)、杉(すぎ)などがある。
竹製茶入れ
竹を使用した茶入れ。軽やかさと日本らしい美しさが特徴。
金属製茶入れ
銅や真鍮、銀などの金属で作られた茶入れ。高級感があり、特別な茶事で使われることがある。
蒔絵(まきえ)茶入れ
漆塗りの茶入れで、上に蒔絵が施されたもの。高級感があり、美しいデザインが特徴。
形状による分類
天目型茶入れ(てんもくがたちゃいれ)
口が広く、底が狭い円筒形の茶入れで、一般的によく使われる形状。
大瓶(おおびん)型茶入れ
瓶の形状をした茶入れで、独特の美しさがある。
丸茶入れ
丸い形状の茶入れで、シンプルで洗練された印象がある。
水指(みずさし)
水を入れるための陶磁器製の容器。茶釜のお湯の温度が熱くなりすぎないように、又は建水の水の給水用としての水を溜めておくのが役割です。
茶巾(ちゃきん)
棗(なつめ)
点てた時にどろっとした濃茶の抹茶を入れるための小さな木製または陶磁器製の容器。形状もいくつかあり、円形の丸棗や長方形の長棗、角ばった角棗があります。茶入れと違って、濃茶の抹茶を入れておくため、冬場の肌寒い時期によく使われます。
茶釜(ちゃがま)
湯を沸かすための鉄製または銅製の釜。茶道における湯沸かしは茶の湯を点てるために欠かせない要素です。炭や薪でおこした火の上に置いて使用します。
素材による分類
鉄製茶釜(てっせいちゃがま)
鉄で作られた茶釜で、錆びにくく、熱伝導が良いため、広く使用されている。
銅製茶釜(どうせいちゃがま)
銅で作られた茶釜で、美しい光沢があり、高級感があるため、特別な茶事で使われることがある。
真鍮製茶釜(しんちゅうせいちゃがま)
真鍮で作られた茶釜で、金色の光沢が特徴で、錆びにくい。
形状による分類
平釜(ひらがま)
底が平らで、直線的なデザインが特徴の茶釜。
丸釜(まるがま)
底が丸みを帯びていて、丸い形状が特徴の茶釜。
筒釜(つつがま)
筒状の形状をした茶釜で、シンプルなデザインが特徴。
デザインや柄による分類
無地(むじ)
無地の茶釜で、シンプルで落ち着いた雰囲気がある。
彫金(ちょうきん)
金属を彫刻したり、金箔を貼り付けたりした装飾が施された茶釜。
鍛金(たんきん)
金属を鍛えて凹凸をつけたり、模様をつけたりした茶釜。
炉(ろ)または風炉(ふろ)
炉(ろ)
炉は、茶室の畳の一部をくり抜いて設置される囲炉裏のような暖炉。主に寒い時期(例:11月から4月)に使用される。炉は茶室の中央寄りに設置され、茶道具や茶釜が置かれる。炉を使う時期は「炉開き」と呼ばれ、寒さが厳しい冬を暖かく過ごすための茶事が行われる。炉の使用に伴い、茶室の作法や装飾が冬仕様に変わる。
風炉(ふろ)
風炉は、暖かい時期(例:5月から10月)に使用される移動式の炉。通常は茶室の端に設置され、風炉台(ふろだい)と呼ばれる台の上に茶釜が置かれる。風炉を使う時期は「風炉開き」と呼ばれ、涼しい雰囲気を楽しむための茶事が行われる。風炉の使用に伴い、茶室の作法や装飾が夏仕様に変わる。
点前板(てまえいた)
主に茶碗や茶入れなどを運ぶための木製や竹製または陶磁器性のトレイ。形状としては一般的な長方形点前板、コンパクトで使いやすい正方形点前板、曲線美が目を引く陶磁器製点前板があります。デザインも無地、染め、彫刻等があります。
蓋置(ふたおき)
茶筅や茶碗の蓋を置くための小さな台。陶磁器製では美濃焼や瀬戸焼などが有名です。木製では温かみのある檜、桐、杉を使用しているのが特徴です。竹製はその軽さと見た目から日本らしい美しさが人気です。こちらも形状は円形、正方形、長方形の3種類に分類され、デザインは無地や染め、蒔絵があります。
建水(けんすい)
柄杓(ひしゃく)
茶釜の湯を汲むための杓。柄杓を使い茶釜から湯を組む様は茶道の美学や作法を表現する重要な要素のひとつです。一般的には竹や木で作られた柄杓が使用されますが、金属製も存在します。
素材による分類
竹製柄杓
竹を使用した柄杓で、軽やかさと日本らしい美しさが特徴です。竹製柄杓は一般的に広く使われている。
木製柄杓
様々な木材を使用した柄杓で、温かみのある風合いが特徴。代表的なものに、檜(ひのき)、桐(きり)、杉(すぎ)などがある。
金属製柄杓
金属(銅、真鍮、銀など)で作られた柄杓で、高級感があり、特別な茶事で使われることがある。
形状による分類
直柄杓(ひたいしゃく)
柄が直線的な形状をした柄杓で、シンプルで扱いやすいのが特徴。
曲柄杓(まがりひしゃく)
柄が曲がりを持った形状をした柄杓で、独特の美しさがある。
サイズによる分類
大柄杓(おおひしゃく)
大きいサイズの柄杓で、茶事や茶室の広さに合わせて使用される。
中柄杓(なかひしゃく)
中くらいのサイズの柄杓。一般的に使用されるのは中柄杓が多い。
小柄杓(こひしゃく)
小さいサイズの柄杓で、狭い茶室や個人用で使われることがある。
帛紗(ふくさ)
茶道具を清めるときや、茶器を包む時に用いる布です。色は基本的に朱、赤、紫の3種類があり、男性は紫、女性は赤又は朱を一般的に使用します。赤と朱の違いですが、赤は裏千家、朱は表千家といった茶道の流派ごとで変わってきます。素材や色柄、サイズによって細かく分類されます。
素材による分類
絹(きぬ)
上質な絹織物で作られた帛紗で、光沢感があり、高級感が漂う。
綿(めん)
柔らかな綿織物で作られた帛紗で、使いやすさと手触りの良さが特徴。
麻(あさ)
麻織物で作られた帛紗で、通気性が良く、清涼感があるため夏の茶事に適している。
色柄による分類
無地(むじ)
無地の帛紗で、シンプルで落ち着いた雰囲気が特徴。
染め(そめ)
様々な技法で染められた帛紗で、季節や茶事の趣向に合わせた柄が描かれる。
草木染(そうもくぞめ)
自然の草木を使って染められた袱紗で、独特の色合いと風合いが特徴。
サイズによる分類
大帛紗(おおふくさ)
大きいサイズの帛紗で、茶碗や茶入れなどの大きめの茶道具を包むのに適している。
中帛紗(なかふくさ)
中くらいのサイズの帛紗で、一般的によく使われるサイズです。茶筅や茶杓などの道具を包むのに適している。
小帛紗(こふくさ)
小さいサイズの帛紗で、小物を包むのに適している。
最後に
いかがでしたでしょうか。今回ご紹介した内容は代表的なものですが、茶道の熟練度や茶事のシーン、流派によって使用する茶道具の素材やデザインも変わってきます。時期ごとに茶道具を変えていくものもあり、全て覚えるのは大変ですよね。そんな時はぜひこの記事をもう一度見返してみてください。