骨董品の買取

骨董品・古美術品の買取は税金がかかる?計算方法とともに解説

「趣味で集めた骨董品を整理したい」
「家の片付けをしてたら押し入れの中から古美術品らしきものが出てきた」など、さまざまなきっかけで骨董品・古美術品の扱いに困っている方も多いと思います。

骨董品・古美術品は買取に出すと、思いもよらない値段を提示されることもあります。そのため自分で判断し処分するのではなく、買取専門業者などに見てもらうのがおすすめです。

「値打ちもわからなければ売る方法もよく知らない」
「税金はかかると聞いたことがある」
こんな風に迷って、買取に出すのを躊躇している方もいるでしょう。

本記事では、骨董品・古美術品の買取を検討中の方に向け、それらの考え方や買取方法、そして何より気になる税金のことについてわかりやすく解説します。

税金の計算方法も解説しますので、骨董品・古美術品の買取をお考えの方に役立つことでしょう。

骨董品・古美術品には何が当てはまるのか

そもそも骨董品・古美術品とは何を指すのでしょうか。いずれもよく聞く言葉で、なんとなくのイメージは付くかもしれませんが、その定義を知る方は少ないと思います。

実は骨董品にはアメリカでははっきりとした定義があります。ずばり「製造から100年以上経過した工芸品や美術品」を指します。「100年」という明確な基準があるということです。

しかし、日本では100年経過していなくても「骨董品」と呼んでおり、その定義は明確ではありません。

「古美術品」はどうでしょうか。骨董品の中でも、美術的な価値のあるものを古美術品と呼んでいます。具体的には書画や彫刻、陶磁器などがそれにあたります。また、古美術品は日本のもののみならず、海外の工芸品、民芸品なども含まれます。

このように、日本における骨董品・古美術品の定義はあいまいです。ただし、それらを買取に出す場合の税金については明確な線引きがありますので、しっかりと理解しましょう。

骨董品・古美術品の買取は税金がかかる場合がある

骨董品・古美術品の買取を検討中の方がもっとも気になるであろう「税金」について解説します。

骨董品の中には、「生活の道具」か「古美術品」なのか、はっきりしない品物もありますよね。多くの人が「生活の道具」と認識していたものを、愛好家が「素晴らしい古美術品」と呼ぶ場合なんかもあります。そんな品物を買取してもらう場合、税金はどうなるのでしょうか。

「価額」という考え方

骨董品や古美術品をを買取してもらう時、税金がかかるか否かを測るものさしは「価額」になってきます。「価額」は買取価格と同じ意味ではありません。「価格」ではなく「価額」である点に注意してください。

「価格」はあくまでも売り手側が設定した値段を指しますが、「価額」はその商品の「そもそもの値打ち・価値」を客観的に示した金額です。

「価格」は売り手側の意思などにより、高くなったり安くなったりと変動しますが、「価額」はその品物の価値を表すのでそのようなことはありません。税金がかかるかどうかを決めるのは、「価格」ではなく、この「価額」である点を忘れないようにしてください。

とはいえ、買取業者にわざわざ安く売却する、あるいは買取業者がわざわざ高く買い取ることはほとんどないでしょう。そのため、多くの場合は買取価格を「価額」と認識しておいて大丈夫でしょう。

税金がかかるかどうかは「価額」によって決まる

骨董品・古美術品の税金は「価額」によって、また多くの場合は買取価格によって決まります。ではどのような基準があるのでしょうか。

結論から言うと、「買取業者に売却した1組または1点の骨董品が30万円を超える場合」に課税対象となります。

骨董品・古美術品の価格は、その歴史的価値、希少性、美しさ、状態、そしてその作家の人気度などで変動します。専門の鑑定士はそれらを考慮し、価格を設定するわけですが、買取店に売却した場合はその価格が、税金の有無を左右します。

逆に言うと、30万円以下の値段が付いたものは「生活用不動産」と認識され、税金はかからないということです。

骨董品・古美術品の買取にかかる税金とは

骨董品・古美術品の買取にかかってくる税金は、何に分類される税金なのでしょうか?

基本的には「譲渡所得税」に分類されます。買取業者への売却は「譲渡」になり、そこで得られる所得は「譲渡所得」になるからです。

「譲渡所得税」の例外として、「生活用不動産の譲渡による所得」は非課税となります。そのため、衣服やタンスといった家具の譲渡所得は課税対象になりません。30万円以下の骨董品・古美術品もこれに含まれるため、非課税になります。

譲渡所得は2種類に分けられる

譲渡所得は、主に2種類に分けられます。それが「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」です。

どう違うのでしょうか?それぞれの定義は以下のようになっています。

  • 長期譲渡所得…譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるもの
  • 短期譲渡所得…譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のもの

分かりやすく言えば、入手してから売却する年の1月1日までの間に、5年以上経っていれば「長期」、経っていなければ「短期」ということです。

この「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」は、譲渡所得の計算方法において大事になってきます。

骨董品・古美術品の買取にかかる税金の計算方法とは

それでは気になる税金の計算方法を説明していきます。

まず、「譲渡所得金額」の計算方法を説明します。

譲渡所得金額=譲渡価額−(取得費+譲渡費用)

取得費はその品物の購入代金、譲渡費用は査定料などの手数料です。つまり、譲渡して得た合計金額から、経費を引いたものが譲渡所得金額です。

これをふまえた上で、税金の計算をする時の譲渡所得金額を説明します。

税制上の譲渡所得金額 = 短期譲渡所得金額 + 長期譲渡所得金額×1/2 − 50万円

こちらの計算式にある「ー50万円」は特別控除と呼ばれ、この分は税金の計算上では控除されます。つまり、そもそも「短期譲渡所得金額+長期譲渡所得金額×1/2」が50万円に満たないときは、税金がかかりません。

このように30万円以上の骨董品・古美術品を買い取ってもらっても、必ず税金がかかるというわけではありません。

税金がかからない場合の例

例えば以下の場合は税金がかかってきません。

1年間に、
「2年所有した価額60万円の絵画(取得費35万円)」と、
「7年所有した価額100万円の陶磁器(取得費60万円)」を譲渡した場合。

「2年所有した絵画」 は短期譲渡所得で60万-35万=25万
「7年所有した陶磁器」は長期譲渡所得で100万-60万=40万

税制上の譲渡所得金額 =
短期譲渡所得金額 (25万)+ 長期譲渡所得金額×1/2(20万)=45万

ここへ「ー50万円」特別控除されるので、この場合は税金がかかってこないことになります。

税金がかかる場合の例

以下のような場合は税金がかかります。

1年間に
「2年所有した価額60万円の絵画(取得費35万円)」と、
「7年所有した価額100万円の陶磁器(取得費30万円)」を譲渡した場合。

「2年所有した絵画」 は短期譲渡所得で60万-35万=25万
「7年所有した陶磁器」は長期譲渡所得で100万-30万=70万

税制上の譲渡所得金額 =
短期譲渡所得金額 (25万)+ 長期譲渡所得金額×1/2(35万)=60万

ここへ「ー50万円」特別控除をされても、税制上の譲渡所得金額は10万となり、課税対象となります。

税制上の譲渡所得がある場合は確定申告が必須

税制上の譲渡所得がある場合は、その翌年に確定申告を行うことが必須になってきます。

当然ながら、申告漏れは単に「忘れていた」場合でも無申告加算税や延滞税といったペナルティが課せられます。故意に申告せず、悪質と判断された場合は「500万円以下の罰金もしくは5年以下の懲役、もしくはその両方」が課せられる可能性もあります。

骨董品・古美術品を買取してもらった際は、課税対象でないか必ず確認し、確定申告を実施してください。「知らなかった」では済まされません。

少しでも疑問に思うことがあれば、税理士に相談をするのがよいでしょう。

骨董品・古美術品の買取方法とは

骨董品・古美術品の税金について理解したところで、それらを買取してもらう方法をご紹介していきます。

自宅の近くに買取店舗がない場合や、なかなかお店に赴く時間が確保できない方でも、便利な買取手段が用意されています。それらを活用し、自身に合った買取方法を選択してください。

主要な買取方法は下記の通りです。

  • 出張買取
  • 宅配買取
  • 店頭買取
  • フリーマーケット
  • オークション

出張買取

出張買取はご自身の都合の良い日にち、時間を選択し、査定士に自宅まで来てもらえる買取方法です。

近隣に買取店がない場合や、売りたい骨董品・古美術品が複数点あって持ちこむのが難しい場合などに便利です。

まずは電話やメールなどで、お店に問い合わせてみましょう。訪問日や流れなどを解説してくれるはずです。

宅配買取

宅配買取は自宅に送られてくる宅配キットに売りたい骨董品・古美術品を詰めて、所定の宅配業者に集荷依頼の上、発送する買取方法です。

後日、査定結果がメールや電話で伝えられるので、納得できれば買取成立。銀行口座へ代金が振り込まれる仕組みです。

自分のタイミングで作業できるので、時間がない方などにもおすすめです。

店頭買取

近隣に店舗があり、自身で品物の持ち込みが可能なのであれば、最も早いのは店頭買取です。

店頭買取の良い所はじっくりと査定員と話をできることでしょう。査定金額に関する解説なども受けられるはずです。

また、骨董品や古美術品は大変繊細な品物。それを自身の手で持っていけるのも安心感があります。

フリーマーケット

フリーマーケットも買取手段の一つに挙げられます。「蚤の市」とも呼ばれる、骨董品のフリーマーケットが、日本各地で催されています。ただし、参加するためには手続きが必要なほか、自分で価格を決定するので知識なども必要となります。

ただしお客さんの中には目の肥えた骨董好きもいらっしゃるでしょう。気の合う仲間が見つかるかもしれません。価格交渉もありえます。コミュニケーションの要素も持った特殊な売り方と言えます。

オークション

オークションも売却ルートの一つと言えます。蚤の市や骨董市に合わせて、古物商や愛好家によるオークションが実施されることがあります。集まるのは自分と同じ、骨董好きが多いことでしょう。参加し出品すれば買い手が付く可能性はありますが、当然価格がどうなるかはその場次第です。

また、オークションと聞いて、ネットオークションを連想する方も多いと思います。ネットオークションもかなり主要な売却ルートとなりました。ただしネットオークションのデメリットは現物を見てやり取りできないことです。

骨董品・古美術品は写真だけで現物の雰囲気、質感、味わいなど理解してもらうのは限界があります。また購入後のトラブルの可能性も0ではないのが現実です。よく検討すべき選択肢であると言えるでしょう。

骨董品・古美術品を買取に出す際は税金に気をつけよう

本記事では、骨董品・古美術品の買取と、その税金について解説してきました。
骨董品や古美術品は、「税金がかかる」「確定申告しなければいけない」などの先入観から、買取を躊躇してしまう方も多いことと思います。

しかし、その中身を理解すれば、さほど複雑ではないことがお分かりいただけたと思います。税金の金額なども、ご自身で計算できるものです。

とはいえ、金額等が該当すれば課税の対象となり、確定申告は必須です。骨董品・古美術品を買取に出す際は、税金についての確認を怠らないようにしてください。少しでも疑問があれば税理士に相談することをおすすめします。

骨董品・古美術品は、大変価値のある品物です。正しい知識を理解し、売り手、買い手ともに気持ちの良い買取ができるよう、願っています。